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【風を読む】対中の守りを固めたいのなら 論説副委員長・長谷川秀行

レアアースを含んだ鉱石=2011年、東京都内(ロイター)
レアアースを含んだ鉱石=2011年、東京都内(ロイター)

 やはりこれを持ち出してきたか、と思った。中国がハイテク機器や防衛装備品に欠かせない鉱物資源、レアアース(希土類)の対米輸出規制をちらつかせていることである。習近平国家主席がこれを中国の「戦略資源」と評したのがきっかけだ。対米カードとしてレアアースを利用する可能性がにわかに取り沙汰されるようになった。

 「中東に石油あり、中国にレアアースあり」。トウ小平が1992年の南巡講話で語った言葉である。中国は低価格で輸出攻勢をかけて各国の鉱山を閉山に追い込み、突出した生産大国になった。かつて生産量世界一だった米国も今やレアアース輸入の8割を中国に頼る。調達が滞れば影響は甚大だ。

 それにしても、またかと思う。誰しも思い出すのは2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後の一件だろう。中国は日本向けの通関を遅らせる事実上の禁輸を行った。中国の常套(じょうとう)手段である。当時の中国は各国への輸出枠も削減していたため欧米からも反発を受け、日米欧が世界貿易機関(WTO)に提訴して全面勝訴した。

 中国が今後、実際に対米規制を行うなら、大義名分は安全保障上の脅威だろうか。ただ今回は、規制が国際ルールに反するかを問うてもむなしい。米国自身、安全保障を持ち出して同盟国に貿易紛争を仕掛けているからだ。

 では、米国は規制の悪影響を効果的に減じられるのか。先に米商務省は重要鉱物の海外依存を減らす対策を示した。採掘業者への低利融資などの生産拡大策もあるが、国内供給網を再構築するには相当の時間を要しよう。

 むしろ対策で注目したいのは、日本やオーストラリア、欧州などの同盟国との協力強化をうたったことだ。尖閣の事件後、日本はレアアースを産出する豪州と資源開発を行ったり、使用量を減らす技術や代替材料の開発を進めたりした。こうした知見を結集できれば、米国にとって有益だろう。

 トランプ政権を振り返れば、中国のハイテク企業封じなど、攻めにつながる同盟国との連携に動くことはあっても、守りを固めるために協力を求めることはほとんどなかった。だが、こういうときこそ同盟国の存在は重要度を増す。いつまでも日欧相手に拳を振り上げている場合ではない。

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