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【耳目の門】(9)不人気な政策 「選挙の年」こそ積極議論を 石井聡

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 〈政治とは情熱と判断力の2つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくりぬいていく作業である〉

 19世紀から20世紀にかけて活躍したドイツの社会学者、マックス・ウェーバーが「職業としての政治」と題して行った講演の中で語った言葉として知られる。

 粘り強く、客観的に課題の解決に取り組み、時間をかけてでも実現する。ときを超えて、政治家のあるべき姿として今に通じるものといえる。

 昨今かまびすしい衆院解散論、衆参同日選論は「やる」「やらない」の議論はあっても「堅い板」の話はなかなか聞こえてこない。

 もとより、解散説は消費税増税の延期と結び付いて流れ始めた。ところが、延期した先がどうなるかについて、十分な考察がなされているようには思えない。重厚な論争に発展しない印象を、はなから与えているのだ。

 ◆8割世論への説得

 4月、5月と改元、御代替わりの行事が続くなかで、皇室制度に対する国民の関心は改めて高まった。それは同時に、皇室の今後についても、国民が旺盛な意識を持つきっかけにもなったようだ。

 その傾向は、各種世論調査で「女性天皇」への賛成論が圧倒的多数に上るという形で表れている。

 政府は安定的な皇位継承を確保するための検討に入ることにしている。その基本は、皇室の伝統にのっとり、父方の系統に天皇を持つ「男系の男子」による継承を維持することにある。

 安倍晋三首相は「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重み」を踏まえ、慎重に検討する必要性を指摘している。

 5月の本社・FNN合同世論調査で「女性天皇と女系天皇の違いをどの程度理解しているか」と聞いたところ「あまり理解していない」と「まったく理解していない」が合わせて半数を超えた。

 「女性天皇」への支持者には、男系男子の意義についての理解が広がっていない。「男系男子派」はそうとらえたがる。これまで126代にわたり、例外なく受け継がれてきた伝統への無理解にもつながっているというわけだ。

 8割に達しようとする女性天皇容認論に向き合い、その説得を図るのは大仕事である。女性天皇の是非については落ち着いた議論を重ね、地道に理解を広げるべきであろう。

 いったん失ってしまったら取り戻せない価値について、国民の胸に響くような説明を重ねてもらいたい。

 ◆特定の利害関係者

 トランプ米大統領の来日は、令和時代を迎え、天皇陛下の初の国賓として同盟国の指導者を招いたことに最大の意味があった。その分、日米首脳会談も経済問題でギリギリと中身を詰めたふうではなかった。

 ただトランプ氏が「7月の(参院)選挙が終わるのを待つ」とツイッターでつぶやいたのは、日本側にえたいの知れない不安な気分をもたらし、野党は「密約」の存在を指摘する。

 米側は自動車に加え、農産品の輸出拡大を強調しだしていることにも留意すべきだろう。そこで確かめておきたいのは、日本では平成30年度産米から政府の生産調整(減反)が廃止されたことになっている、という点だ。

 安倍首相は「農業の構造改革を進めて成長産業にする」と唱えていたが、政府与党内では「減反廃止というのは間違い」という言葉がささやかれている。

 廃止から2年目となる令和元年度産の主食用米について、増産する都道府県はほとんどなく、減産が増えているという。その背景には、農林水産省が飼料用米への転換を促す補助金を投じてきたことなどもある。

 米価が下落するのを避ける政策への固執は、特定の利害関係者(支持者)の方だけを向こうとしているさまを示す。わざわざ高いコメを食べたいという消費者がどれだけいるだろうか。

 米側はかつてほどコメの市場開放を強く言わなくなった。とはいえ、日本は体質強化に反する政策を続けていると、その姿勢が問われかねない。

 消費税率の引き上げを延期すべきかどうかが、解散論の根拠となるのは「経済への悪影響」への懸念だ。アベノミクスが頓挫する事態を避ける観点からもっぱら語られる。

 だが、そもそも消費税が担う社会保障の財源のあり方、社会保障費の抑制についての議論はいつ、どこで行い、結論を出すのか。

 「選挙の年」にあたるだけに、負担増やサービスの縮小にまつわる議論は封印されがちである。

 団塊世代が75歳以上になる令和4年に社会保障は急増するといわれる。そのときのために抑制策は「温存」してあるという。だが、それは不人気な政策の先送りに陥らないか。選挙の年だからこそ、与野党間の積極的な議論が不可欠である。

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