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【日曜に書く】アスリートの言葉 論説委員・別府育郎

 同じ言葉をパラリンピアン、谷真海からも聞いたことがあった。谷は骨肉腫を発症し、20歳の春に手術で右足の膝から下を切断した。とびきりの笑顔が印象的な彼女だが、当時は、なぜ私なのか、ここは地獄かと、泣いてばかりの毎日だったと話してくれたことがある。

 そんな彼女に、母親はこう言葉をかけたのだという。「神様はね、その人に乗り越えられない試練は与えないんだよ」

 言葉は、その後の闘病や、スポーツ義足を装着しての競技生活を支え続けた。走り幅跳びの日本代表としてアテネ、北京、ロンドンと3度のパラリンピックに出場し、東京五輪招致ではプレゼンターとして重要な役目を果たした。結婚、出産を経て現在は、来年の東京パラリンピックへ、トライアスロンでの出場を目指している。

 原典は、新約聖書にある。新共同訳聖書による、コリントの信徒への手紙第一から。

 「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」

世界で一番の孤独

 泳ぎたいのに泳げない池江もつらいが、泳げるのに思うように泳げない萩野公介もつらい。

 リオ五輪金メダリストのエース萩野は「自分が『こうありたい』という理想と現実の結果の差が少しずつ自分の中で開いていき、モチベーションを保つことがきつくなっていきました」と日本選手権を欠場した。深刻な不振の、原因は不明だ。

 一人のスイマーを思いだす。2年後にソウル五輪を控え平泳ぎの彼は100メートルで日本記録を更新し、五輪のライバルがそろう全米オープンでも優勝した。だがこの試合をピークに調子を落とし、タイムが上がらない。病院で、抑鬱症と診断された。通院しながらの五輪選考会で代表落ちが決まった瞬間、病気が治ったと感じたのだという。

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