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【宮家邦彦のWorld Watch】東京から見た米中貿易戦争

 報道によれば今回の米中合意案は7章、150ページもあるという。通常この種の案文は全体で一括合意する「パッケージ」であり、案文にはカッコ付きの米中両論併記が少なくとも数十カ所はあったに違いない。交渉の過程で個々の相違点につき一定の条件で了解し合うことは多々あるが、それはあくまでパッケージの一部であり、変わり得るもの。合意は未成立だ。

 以上に鑑みれば、米側の主張は信じ難い。そもそも交渉は決着に程遠く、中国側は国内法改正に関する決着していない条項を拒否しただけで、合意を破り再交渉を求めた可能性は低い。一方、中国側の説明も噴飯ものだ。彼らが交渉過程で国内法改正の可能性に言及した可能性は高い。もちろん、そのような法改正問題が公表されず、中国の指導者が米国の圧力に屈し「メンツ」を潰されないことが前提である。しかし米側は合意文全体の公表を求めたらしい。これを受け入れる指導者など今の中国にはいないだろう。

 米中貿易交渉は今後も長く続く米中覇権争いの一環であり、仮に合意ができても、それはあくまで一時的、限定的、表面的なものだろう。このままでは米中対立激化は必至だが、いずれ世界は米中を中心とする2つのデジタル経済ブロックに分裂するかもしれない。起こり得る最悪の事態ではあるが、日本も今から考えておく必要がある。

【プロフィル】宮家邦彦 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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