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【朝晴れエッセー】ふたりのお花見 5月15日

 朝から雲ひとつないお天気。桜も満開になっている。お昼ご飯のお米を研ぎながら、そうや、ご飯が炊きあがったらお弁当を作って公園でお花見をしようか…さっそく冷蔵庫から食材を出した。卵焼き、ベーコンと野菜のいため物。あと夕食の残り物を詰め込んだ。炊きあがったご飯の上に、ごま塩と自家製の紅しょうがを散らした。久々のお弁当作りも、ワクワクとして楽しい。準備を整え「お父さん、公園で桜を見ながらご飯を食べよう、さっ、行こう」。夫にジャンパーを着せた。公園の中にあるテニスコート。そばにある老木の桜が見事に満開。その下に、ビニールシートを広げ「よいしょ」とふたりは座った。「きれいやなあ、見てぇ」、私はお弁当を開けて夫に渡した。花より…もぐもぐ食べ始めている夫。ゆっくり食べよな、と私。

 今年2月に結婚60年を迎えた。その旨を話しても理解しきれずに終わってしまう。年ごとに進んでいく認知症。言葉の数も極端に少なくなった。ぼんやりと桜をながめていると、過去のさまざまなことが脳裏に浮かんでくる。そして現状と重なり複雑な気持ちになっていた。

 そのとき、「いいお天気で、おふたりでいいですわねぇー」。テニスコートでプレーを終え、ボールを集めながらママさんたちから声をかけられた。私は、笑顔でお礼を言った。一転して軽やかな気分になった。舞う花びらを目で追いながら、今日のお花見が、のちのちに懐かしい思い出として残ることを願っていた。

後藤 悦子 79 大阪市天王寺区

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