PR

ニュース コラム

【風を読む】ただほど高いものはない 論説副委員長・沢辺隆雄

参院本会議で低所得世帯の学生を対象に大学など高等教育機関の無償化を図る新法が可決・成立し、議場に一礼する柴山文科相=10日午前 
参院本会議で低所得世帯の学生を対象に大学など高等教育機関の無償化を図る新法が可決・成立し、議場に一礼する柴山文科相=10日午前 

 教科書にも登場するので宮沢賢治の短編「注文の多い料理店」(新潮文庫)をご存じの方は多いだろう。山奥に猟に出かけ成果なく、おなかがすいた紳士2人の目の前に、西洋料理店「山猫軒」が現れる。

 「どなたもどうかお入りください。けっしてご遠慮はありません」。ただでごちそうしてくれるのかと喜んだ男たちだが、料理はなかなか出ず、髪をきちんと、履物の泥を落としてなど、客への不思議な注文が次々と…。

 昔から、うまい話には気をつけようという。ただほど高いものはないとも。先週末、幼児教育・保育の無償化と、低所得者を対象にした高等教育の無償化を図る法律が相次いで成立したが、肝心の入る先の中身は大丈夫か課題が山積している。厳しい財政の中で優先すべきことなのか、弊紙を含めて新聞各紙の論調は、むしろ厳しい。

 幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は低所得世帯を対象に認可保育園や幼稚園などの利用を無償化する。国の基準を満たさない認可外保育園も経過措置として5年間は一定額を補助する。年間7700億円余りの予算が必要という。

 高等教育無償化は、住民税非課税世帯と、それに準じる世帯の学生を対象に大学などの授業料や入学金を減免するほか、返済不要の「給付型奨学金」を支給する。こちらは年間7600億円がいる。幼児教育・保育無償化とともに、財源は10月に予定される消費税率10%への引き上げによる増収分を充てるという。

 幼児教育・保育では、本当に求められているのは安心してわが子をあずけられる先だろう。保育士不足や施設の質が懸念されては、ただと言われても喜べない。無償化の前提となる幼児教育充実の議論も忘れられたようだ。家庭の役割や子供が遊びを通して学ぶ異年齢の交流など、大切なことをおきざりにしないでほしい。

 高等教育無償化に関しても、経済的理由で進学をあきらめないようさまざまな手立ては必要だ。だが本当に大学で学びたいと意欲を持った人材を育てる施策となるか。多額の税金が使われる以上、大学側は高等教育の名に値する教育をしているか、厳しい目が注がれることを銘記してもらいたい。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ