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【iRONNA発】上皇さま 全身全霊、象徴天皇の極致 羽毛田信吾氏

 被災者のお見舞いに限らず、上皇さまと国民の関係は、一人一人の喜び悲しみに心を通わされ、その積み重ねの先に国民全体がある、そういうありようではないかと思う。個を通じて全体を見ると言ったらよいのだろうか。

 上皇さまが心を込めてなさってきたことのもう一つの柱が、平和への願いである。在任中の代表例としてサイパンへの随行を印象深く記憶する。上皇さまは、戦争の惨禍を繰り返してはならない、平和を守らねばいけないという願いを強く持ち、戦後生まれが総人口の80%を占める今、戦争の記憶が風化することへの心配を繰り返し述べておられる。

 国の内外を通じて戦争犠牲者に対する慰霊の旅を重ねてこられたが、平成17年、6万人近くが犠牲になったサイパンに赴かれた際には私もお供をした。多くの人が身を投げたバンザイクリフやスーサイドクリフで海に向かって黙祷される姿を拝しながら、これは慰霊の旅であると同時に、激戦の地に身を置くことによって自らの姿で平和の尊さを訴えておられるのだと思った。

 ◆戦なき平成の世

 在位中では最後となった昨年の全国戦没者追悼式にて、上皇さまは「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」というくだりを加えられた。昨年は明治維新150年、同時に先の大戦までが73年、4年間の大戦をはさんで戦後が同じく73年という節目でもあった。戦前の73年が何度かの戦争を経たのに対し、戦後の73年は戦なき世であった。さらに言えば、平成時代は明治以降、日本が干戈(かんか)を交えなかった唯一の時代として記憶されることになるだろう。戦後そして平成の平和を後の世にもしっかりと引き継いでほしいという、万感の思いをこめたお言葉だったように思う。

 譲位は、突き詰めていえば、全身全霊を傾けてお務めを果たすという象徴天皇の在り方と、ご高齢に伴う体力面などの避けられない制約の2つを前提に、いかに円滑に皇位を引き継いでいくかという命題だと思う。それを考え抜かれての平成28年のお言葉だったのではあるまいか。在任中、最初に上皇さまのお考えをうかがったときは、正直言って強い衝撃を受けた。しかし、上皇さまの深い考えを理解するにつれ、これは上皇さまお一人のことではなく将来の天皇にも通ずる普遍的課題だと思うに至った。

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