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【主張】強制不妊救済法 真摯な謝罪と受け取れぬ

 旧優生保護法下で障害者らが不妊手術を強いられた問題で、一時金320万円の支出を盛り込んだ救済法が成立した。だが被害者の多くはその中身に納得していない。

 救済法は前文に「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記したが、「われわれ」が誰を指すのか明確ではなく、国の法的責任への言及もなかった。

 安倍晋三首相と根本匠厚生労働相はそれぞれ政府と省を代表して反省とおわびの談話を発表したが、文言はほぼ同一である。

 首相の談話には「全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、政府として最大限の努力を尽くす」とする一節が加えられた。これは平成28年に施行した「障害者差別解消法」の内閣府基本方針から引いたもので原文は障害者基本法にある。

 首相外遊中の「談話」としてもあまりに粗雑ではないか。これでは被害者の心に届くまい。

 各地で続く国家賠償請求訴訟で政府は「当時は適法だった」との立場で争っている。確かに旧優生保護法は昭和23年、「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に与野党全会一致で成立した。新聞も世論もこれを是とした。

 基本的人権の尊重や法の下の平等を掲げる憲法の趣旨に反することは明らかであり、平成8年、現行の母体保護法に改正された。反省すべきは政府にとどまらない。国の統計で確認できるだけで約2万5千人が強制や「本人同意」の形で手術を施された。

 国や当時の社会全体が強いた悲劇といえる。ただ政府が代表して被害者の声をくまなければ、先へ進むことができない。

 13年にはハンセン病罹患(りかん)者の隔離政策をめぐる国賠訴訟(熊本地裁)で、当時の小泉純一郎首相が政治判断で原告勝訴の1審判決を受け入れ、国による謝罪と補償につながった事例もある。大いに参考にすべきではないか。

 「障害者差別解消法」は、差別が解消されていない現状への反省から成立した。課題は山積している。国賠訴訟で「当時は適法」を繰り返す政府の主張は、この趣旨に逆行している。差別感情や偏見を生む優生思想を断つため、政府の決意が求められる。

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