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【朝晴れエッセー】そばにいるよ 4月17日

 夜明け前の路地、通勤のために駐車場へ向かっていると100メートルほど先の四つ角で白いふわふわした物が動いていた。猫かな、と思い、つぎに車にやられてもがいているのかと心配になった。ぼんやりした闇にたたずむ街路灯の下で、ぴょんぴょん跳びはねているそれは、元気で、とてもうれしそうだ。なんだ猫が遊んでいるのか、と安心して近づいていく。

 うちにも若い雄猫がいた。無口なやつだったが、深い眼光の奥に、行っておいで、お帰り、の温かい言葉を宿していた。家族のみんながあいつを抱きしめ、もじゃもじゃさすり、ともすれば消えてしまいそうなそれぞれの希望を、しっかり抱えなおしていたのだと思う。うちの家族は、あいつに支えられていた。

 もう3年もたつが、最後まで呼吸することをあきらめなかったあいつの姿を、家族はだれも忘れていない。長男はあれから転職をして黙々と頑張っている。次男は今月から正社員の道で自分の目標を歩き始めた。家内も私も、まだまだやり残している大事な宿題がある。

 うれしそうに跳びはねていたそいつは、路地に迷い込んだ風で膨らんでいるコンビニのレジ袋だった。車を出し、袋を拾っておこうと白みがかった四つ角にさしかかると袋は消えていた。ひょっとしてあれは、あいつだったんじゃないのか。今でもふっと、そう思うときがある。安藤 豊 62 会社員 横浜市中区

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