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【風を読む】TPPに戻ればいいのに 論説副委員長・長谷川秀行

 スーパーでセールを目にする機会も増えたから、外国食材の輸入が増えたと聞いて、さもありなんと思う。牛肉はオーストラリア産だけでなく、カナダ産やニュージーランド産も急増している。豚肉は欧州からの2月の輸入が5割増である。チーズやワインはフランス産やイタリア産が好調だ。

 言うまでもなく、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と日欧経済連携協定(EPA)が立て続けに発効した効果である。関税の削減や撤廃で海外産品がお買い得になる。これは経済連携がもたらす恩恵であり、メガ協定時代では当たり前の風景だろう。

 ところが、その潮流に水を差すような制度が今もあるから、やっかいである。牛肉の緊急輸入制限(セーフガード)だ。輸入が一定量を超えると、国内産業を保護するため関税を引き上げる。2年前も発動したが、最近の輸入増で再びその発動基準に近づいた。

 問題は、対象となる輸入先が実質的に米国に限られることだ。米国以外の主要輸入先はすべてTPPに加盟している。TPPには独自ルールがあるため対象外だ。もし発動されれば、ただでさえTPP離脱で対日輸出が不利になった米国の態度が硬化しないか。日本側が身構えたのも無理はない。

 混乱を避けようと、輸入業者は3月の通関を抑制するなどの対応策を講じた。ただ、それで今回の発動を回避できたとしても、制度が残る以上、今後も同じことの繰り返しとなろう。

 実のところ、制度の役割がどこまで残っているかも疑わしい。制度ができたのは四半世紀前である。その後、国産と外国産のすみ分けが進み、多少の輸入増があっても業界が壊滅的打撃を受けるような状況ではなくなった。

 だからTPP発効と同時に、時代遅れとなったこの制度を廃止する予定だったのに、米国が離脱したため延長を続けているのである。すべては、米国の独善が招いた当然の帰結だ。

 改善したいなら、米国がTPPに戻るか、TPPと同等の条件で日本と合意するしかない。米国がTPP以上の有利な条件を欲張って対日貿易交渉がもつれれば、米業界の苦境はいつまでも収まらない。そんなことは米国も望まぬはずだ。日本は焦らず米国の歩み寄りを促せばよいのである。

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