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【正論】露に領土返還の意思は毛頭ない 北海道大学名誉教授・木村汎

木村汎氏(彦野公太朗撮影)
木村汎氏(彦野公太朗撮影)

 ロシアでの世論調査結果は、たしかに信用しがたい。まず、3大世論調査組織のうち2つまでが、官製機関である。次いで、調査方法も適切といいがたい。固定電話にかけて設問するので、若年層でなく、自宅にいる年金生活者の声を反映しがちである。

 このような欠陥をもつ調査とはいえ、参考になる点がある。1は時期別の数字の変化が分かること。2は政権がどのような項目について、調査を欲しているのかが明らかになることだ。具体例を挙げて説明しよう。

 ≪人気凋落にあえぐプーチン氏≫

 プーチン大統領の人気は多少水増しされているとはいえ、概して高いので、必ず3大機関はこの種の調査を実施する。その結果、ロシア国民間のプーチン大統領支持率の相対的な変化が判明する。

 プーチン氏の人気は、2014年のクリミア併合後に86・2%、15年のシリア空爆開始後に89・9%へと急上昇した。ところが現時点では64%へと落ちている。1月には、同氏を信頼すると答えた者は33・4%、「ロシアが誤った方向へ進みつつある」とみなす者は45%。全て06年以来、最も悪い数字である。

 プーチン大統領の人気凋落(ちょうらく)傾向の理由は、明らかといえよう。一言でいうと、同大統領がこれまで実施した対外的冒険行使のつけが回ってきたのだ。同大統領は、ウクライナやシリアで「勝利を導く小さな戦争」を敢行し、ロシア国民から拍手喝采を浴びた。だが、戦争は始めるのは容易だが、終結するのはむずかしい。その後、二正面作戦の泥沼から足を抜け出せないために戦費や駐留費がかさみ、ロシア経済を圧迫している。

 ロシア国民は、対外的成果の美酒に暫しの間酔っていたが、振り返ってみると己の冷蔵庫がすっかり空っぽになっていることに気づかざるを得なかった。

 彼らは、経済上深刻な“三重苦”に見舞われている。原油価格の暴落、ロシアの通貨ルーブルの急降下、先進7カ国による経済制裁である。プーチン政権は、国庫収入を増大させようとして、年金支給年齢の引き上げや付加価値税の増額を図ろうとした。ところが、政治的不自由には耐えるロシア国民も、物質的生活水準の低下には抵抗を示す。

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