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【一筆多論】和牛やイチゴの種を守れ 佐々木類

日本から中国に持ち出された和牛受精卵の輸送容器の類似品(農林水産省動物検疫所提供)
日本から中国に持ち出された和牛受精卵の輸送容器の類似品(農林水産省動物検疫所提供)

 和牛の受精卵や精液が中国に持ち出されそうになった事件は、昨年7月の発生から8カ月たってようやく男2人が逮捕された。時間がかかったのは、発覚時に動機や流出ルートを解明するわけでもなく、「常習性がない」との理由で無罪放免してしまったためだ。

 和牛の遺伝資源は国の宝だ。長年の努力で品種改良を積み重ねてきた国や自治体、生産者らの努力の結晶でもある。この認識が、農林水産省から相談を受けた捜査当局にも共有されていれば、早期の強制捜査に着手できていたはずだ。

 今回は中国当局の税関で見つかったために未遂に終わったが、氷山の一角とみられる。

 受精卵が海外に流出すれば、畜産農家は大きなダメージを受ける。ブランド力を保つためにも、海外流出の阻止に向けた官民一体の態勢づくりを急がねばならない。

 牛や豚など畜産物の品種には生産者の権利を保護する国際的な仕組みがない。だが、イチゴやブドウなどには「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)」がある。

 その植物にしても、販売先の国で品種登録が必要だ。遺伝資源を守るには、生産者だけではなく、国を挙げた支援態勢づくりが急務だ。

 例えば2018年冬、韓国・平昌五輪で有名となったイチゴだ。銅メダルを獲得したカーリング女子「LS北見」のメンバーが試合中の休息時間「もぐもぐタイム」で、韓国産イチゴを食べて注目された。

 斎藤健農水相(当時)は会見で、このイチゴについて「以前に日本から流出した品種を基に韓国で交配されたものが主だ」と指摘し、日本の品種保護を強化していく方針を示している。

 事情を知った私の周辺にも、「韓国に盗まれたイチゴをおいしそうに食べるなんて…」と残念がる声が上がった。しかし、韓国に遺伝資源が盗まれた上、堂々と幅を利かせている現実を広く日本国民に教えてくれたという意味で、LS北見の選手が果たした役割は大きい。

 斎藤氏が「海外でも知的財産権を取得し、仮に流出が発見された場合は、栽培や販売の差し止め請求などを行うことが重要だ」と強調したのは当然である。

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