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【主張】対北決議案見送り 拉致解決に適切な一手か

 菅義偉官房長官が、日本人拉致を含む人権侵害をめぐり、欧州連合(EU)と共同で昨年まで11年間続けてきた、国連人権理事会への北朝鮮非難決議案の提出に加わらない方針を表明した。

 日本は、EUが単独提出する北朝鮮非難決議案には賛成する方針だ。

 菅氏は「(2月末の)米朝首脳再会談の結果や拉致問題を取り巻く諸情勢を勘案した結果だ」と語った。安倍晋三首相は拉致問題解決のため「私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う」と述べている。今回の非難決議案提出見送り方針は、日朝首脳会談実現のため、北朝鮮側に態度軟化を促す意図があるのだろう。

 拉致被害者の全員救出のため、あらゆる選択肢を排除しないこと自体は当然の姿勢である。

 ただし、その方法論として、決議案提出見送りを、拉致という国家犯罪の責任者である金委員長への誘い水とすることには強い違和感がある。

 日本が国連人権理事会における討議や決議、各種報告書を通じて、北朝鮮による拉致の非道さを世界に訴え、国際圧力を形成してきた点を忘れてはなるまい。

 昨年の非難決議には、拉致被害者と家族の高齢化を踏まえ、拉致問題について「差し迫っている」との表現を盛り込んだ。

 今年の人権理事会の討議では、北朝鮮で拷問や虐待が広範囲かつ組織的に行われているなど過酷な実態が報告された。人権状況に改善はみられない。

 国連総会でも日本とEUが主導して、14年連続で人権状況での北朝鮮非難決議を採択してきた。

 これらの決議は、安全保障理事会決議と異なり拘束力はない。決議案の提出を見送っても、制裁緩和にはつながらない。

 だが、日本はこれまで、一カ国でも多くの賛成票を得るべく外交努力を重ね、北朝鮮はときに反論を余儀なくされた。こうした積み重ねが北朝鮮への圧力となってきた。言いっ放しの討議と違い、決議が決議案提出国の名と共に記録に残ることも重要である。

 先の米朝首脳再会談は不調に終わったが、トランプ米大統領は再会談で、金委員長に対し拉致問題の解決を改めて突きつけた。

 金委員長は追い詰められている。今が拉致問題を動かす好機であることは間違いない。それゆえ、戦略の動揺は禁物である。

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