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【日曜に書く】釜石鵜住居、8年目の春は 論説委員・佐野慎輔

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釜石鵜住居復興スタジアムで子供にラグビーのパスを出す安倍晋三首相(右手前)=9日、岩手県釜石市(代表撮影)
釜石鵜住居復興スタジアムで子供にラグビーのパスを出す安倍晋三首相(右手前)=9日、岩手県釜石市(代表撮影)

 思わず「ほおっ」と声をあげたくなった。岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)。新しく家々が建ち、ヘアサロンやオートバイの店舗ができて生活の匂いが漂ってくる。

 ◆生活の匂いがしてきた

 初めて訪れたとき、ここには何もなかった。いや8年前の3月11日、黒い壁のようになった海の水がこの地域を襲い、推計162人が犠牲となった。津波がさらった生活の跡が、まだそこかしこに残っていた。

 4年前、ラグビーワールドカップ(RWC)の会場に決定。流された釜石東中学校と鵜住居小学校の跡地を整備し新築するスタジアムの土台となる土盛りが始まった。2年前、小、中学校はJR山田線を挟んだ向かい側の高台に移転して統合校舎が完成、生徒たちが帰ってきた。しかし、人々の暮らしが戻るのはまだ先のように思われた。

 昨年8月、釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としが行われたときも、住宅はそれほど多くあったわけではない。

 「ここ半年ですね、家が増えたのは。別の場所に家を建てられた方もいらっしゃいますが、やっぱり鵜住居がいいと戻ってこられるんですね」。釜石市RWC推進本部主幹、増田久士さんも変化を感じるという。

 ◆準備は整ってきている

 内陸部と結ぶ釜石自動車道が9日に全線開通、110分はかかっていた花巻市役所と釜石市役所間が30分ほど短縮される。23日には不通だったJR山田線が復旧、三陸鉄道に移管されてリアス線として開通する。

 RWC開催に必要な、いや、生活に欠かせない交通機関である。鵜住居駅も復活、ちょうど小、中学校とスタジアムを結ぶ直線のまんなかに陣取る。直線は地域の中心線である。

 駅の周辺では、津波の被害を後世に伝える施設「いのちをつなぐ未来館」や「釜石祈りのパーク」と呼ぶ慰霊の公園が整備を急ぐ。観光交流拠点「鵜の郷(さと)交流館」とともに23日のリアス線開通に合わせて開館する。

 この地でRWCが開かれるから整備が進んだことは間違いない。ただ、すべてがそのおかげだとはいいたくはない。「被害から立ち上がろう」とする人々の強い意志が復旧を早めた。

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