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【主張】統計不正の再検証 これは隠蔽ではないのか

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 厚生労働省が毎月勤労統計を長年、不適切な手法で調査していた問題で同省の特別監察委員会が追加報告書をまとめた。不正の経緯はある程度判明したが、昨年から密(ひそ)かにデータ補正を始めた理由などには疑問が残ったままだ。

 1月にまとめた報告書は同省の現役幹部が中心となって調査していた。このため調査の中立性に疑念が強まり、再検証に追い込まれた。それでも最終的な結論は「組織的な隠蔽(いんぺい)は認定できない」と同じだった。

 しかし、担当者は政府統計を統括する総務省の問い合わせに対し、虚偽説明したことを認めている。それは自分たちにとって都合の悪い事実を隠すことを意図したからではないのか。不正を矮小(わいしょう)化するような再検証では、国民の理解は得られまい。

 勤労統計は大手事業者を全数調査するのが決まりだが、厚労省は東京都内は事業所数が多く、15年前に抽出調査に勝手に変更していた。適正なデータを算出するための補正も怠っていた。これにより統計の賃金データが実態よりも低くなり、雇用保険などで過少給付が生じた。

 不適切な調査手法について、担当者は「影響は軽微だと考えていた」と答えたという。無責任ぶりにあきれるばかりだ。統計の信頼性を揺るがす不正であり、追加報告書が「甚だしい職務怠慢だ」と批判したのも当然である。

 ただ、組織的な隠蔽を認めなかった判断には首をかしげる。不適切調査が続いていた当時、担当者は総務省の問い合わせに「全数調査している」と嘘をついたが、「意図的に隠そうとしたとまでは言えない」と認定した。

 これは組織的な隠蔽を極めて狭義にとらえたものだ。監察委の樋口美雄委員長は、国会で「隠蔽の有無はグレーだ」と答弁した。これでは責任追及もできない。身内に甘い事実認定では、再発防止に取り組む厚労省の姿勢にも疑念の目が向けられる。真相解明は総務省による調査に委ねるべきだ。

 一方、昨年から統計データの補正を始めたことについて、野党は首相官邸が関与した疑いがあると批判している。その経緯は徹底した検証が不可欠だが、より実態を示す正しいデータに改めるのは当たり前だ。政府統計は多くの課題を抱えている。その改善に向けて建設的な議論を望みたい。

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