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【主張】米朝合意見送り 最大限圧力の原点に戻れ トランプ氏の退席は妥当だ

 北朝鮮が示した非核化措置は極めて不十分だったということだ。米国が制裁の完全解除要求をのまなかったのは当然である。

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談は、物別れに終わった。

 昨年6月の米朝首脳の初会談から8カ月半が経過したが、非核化の進展はみられない。今回も事態の打開はならなかった。

 浮き彫りになったのは、微笑を前面に「非核化する」と言いながら、実際には核・弾道ミサイル戦力の保有にこだわり続ける北朝鮮の頑(かたく)なな姿勢である。

 ≪寧辺解体では不十分だ≫

 トランプ氏は会談後の記者会見で「早くやるよりも正しいことをやる」と語った。十分な合意ができないと判断して席を立ったのは妥当だ。共同声明の発表や成果の誇示を優先するあまり、北朝鮮に譲歩する事態は避けられた。

 北朝鮮は、いまだ日本などを射程に収める弾道ミサイルを多数配備し、核・ミサイルの増産を続けている。トランプ氏は、金委員長がミサイル発射や核実験をしないと改めて約束したと語ったが、北朝鮮の脅威は減らないどころか、時の経過につれて高まっているのである。

 北朝鮮をめぐる核・ミサイル、拉致問題の重大さを強く認識し、脅威と向き合わねばならない。

 金委員長による提案は、寧辺の核施設の解体などにとどまったようだ。これではトランプ氏も不十分とみなさざるを得ない。

 「完全な非核化」は北朝鮮による全ての核物質、核兵器、関連施設の申告から始まる。申告のない「疑惑」施設も含め、米国や国際機関の専門家が自由に査察を行い、すべてを国外へ搬出、無力化することが欠かせない。

 トランプ氏が会見で語ったように米朝間の溝の存在は明白だ。

 金委員長は、対北制裁の完全解除を要求した。核・ミサイルの放棄を求め、国際社会が国連安全保障理事会などで積み上げてきたものだ。容易に応じられない。

 今回の首脳会談に対する大きな不安の一つは、最小限の措置を小出しにして、米国から最大限の譲歩を引き出そうとする、北朝鮮得意の「サラミ戦術」にトランプ氏が取り込まれることだった。そこに至らなかったのは幸いだ。

 忘れてはならないのは、国連などの経済制裁と強力な米軍の存在という、経済、軍事両面の圧力が、核・ミサイルの挑発を繰り返していた金委員長を交渉の場へ引き出した点である。

 トランプ氏は北朝鮮との交渉を継続する考えを示した。北朝鮮に核・ミサイルを全面的に放棄させ、日本人拉致被害者を全員、解放させなければならない。

 トランプ政権や国際社会は、頑なな態度を崩さない北朝鮮に対する「最大限の圧力」の原点に立ち返る必要がある。

 ≪北は非核化措置を示せ≫

 ところがトランプ氏は、会見で制裁強化の意向を問われ、「制裁強化を今、話したいとは思わない」と語った。北朝鮮に対する圧力になり得る米韓軍事演習についても、全面否定はしなかったものの、費用がかかると述べ立てた。これでは、金委員長に対する誤ったシグナルになってしまう。

 2日間の首脳会談を通じ、トランプ氏は「金委員長はすばらしいことをしようと思っている」などと、しきりに持ち上げた。北朝鮮が核実験とミサイル発射を中止したことに感謝の意を伝えた。物別れに終わった会談後の会見でも、金委員長を信頼していると繰り返し表明した。

 北朝鮮の核・ミサイルは、国際社会の平和と安全への重大な脅威である。放棄の要求は、安保理決議に込められた国際社会の総意であり、謝辞は適切ではない。

 トランプ氏は、北朝鮮には経済成長できる潜在力があるとし、日本を含む周辺各国が北朝鮮に協力すると語った。だが、拉致問題が未解決のまま、日本が北朝鮮への経済支援を行うことは絶対にあり得ない。安倍晋三首相は、この日本の立場を繰り返しトランプ氏に伝え、拉致問題解決に取り組むべきである。

 北朝鮮の時間稼ぎが続けば、トランプ政権の対応が軍事的圧力へと傾斜する可能性もある。金委員長のとるべき道は一つしかない。世界が納得できる非核化措置を示し、速やかに実行することだ。それなしに北朝鮮の未来はない。

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