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【日曜に書く】消えた本屋と珠玉の言葉 論説委員・山上直子

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 よく似た名前だが、大阪の古本書店で折口信夫が通い、織田作之助の『夫婦善哉』などにも登場した「天牛書店」(大阪府吹田市)と混同されたのだ。全くの別会社だそうだが、ともあれ、地元住民には長年親しまれた“街の本屋さん”だった。

 ◆愛された理由

 出版不況といわれて久しい。若者の本離れは顕著で、少ないパイを争い、本の販売スタイルが激変している。最大の黒船は、手軽に注文・購入できるネット書店の登場だろう。一部には本を買い切り、値下げ販売も検討しているとも聞く。在庫もサービスも充実した大型書店との覇権争いが熾烈(しれつ)で、小さな書店ではとうてい太刀打ちできないのが現状だ。

 ただ、今ごろ閉店する背景にはこの苦しい何十年かを耐えてきた歴史があったはずで、だからこそ、口惜しい気がする。天牛堺書店は間違いなく、地元で愛された本屋さんだった。その理由の一つは創業当初から古本を扱っていたからではないか。こんなメッセージがあった。

 「高校時代、いつも図書室でかりた本を手にもって帰る私に天牛堺書店の店長さんが『おかえり』『いつも遅いね』とあいさつをしてくれました」

 当時、お金がなくてなかなか新刊を買えなかった高校生も、今や中学の教員となって図書室の担当をしているという。この人の人生に、本と本屋は間違いなく寄り添ってきたのだ。

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