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【主張】広がる統計不正 首相が綱紀粛正の先頭に 効率化へ整理統合を進めよ

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 統計は、国の政策を企画・立案するうえでの基盤である。その意識があまりに希薄だったのではないか。厚生労働省は昨年も不適切な統計データの使用で働き方改革法案を撤回した。財務省では決裁文書の改竄(かいざん)が発覚した。

 類似した不祥事の頻発は、政府全体の規律の緩みの表出ではないか。安倍晋三首相は、綱紀粛正の先頭に立つべきだ。

 働く人の賃金などを調べる「毎月勤労統計」をめぐる不正問題が拡大している。長年にわたる不適切な調査手法で政府統計の信頼性に疑念を招いたばかりではない。外部有識者によるはずの特別監察委員会の検証では厚労省の現役幹部らが聞き取りを行い、「組織的隠蔽(いんぺい)は確認できなかった」などとする中間報告を公表していた。

 ≪中間報告も調査対象に≫

 調査の中立性を損ない、真相の解明を妨げる行為だ。わずか1週間の検証で早期の事態収拾を図ろうとした同省のずさんさにはあきれるばかりだ。こうした調査を許した監察委も機能不全である。そんな中間報告を容認し、国会答弁の修正に追い込まれている根本匠厚労相の責任も極めて重い。

 まず、独立性に疑問を抱かれぬ外部有識者による徹底的な再調査を急ぐべきだ。検証の対象には、組織的隠蔽を否定した監察委の中間報告も含まれる。何よりも問われているのは、昨年から失態が相次ぐ厚労省が、自らを厳しくただす覚悟である。それがなければ再発防止などおぼつかない。

 安倍首相は国会で今回の統計不正について「長年にわたり不適切な調査が行われてきたことはセーフティーネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆さまにおわび申し上げる」と謝罪した。

 野党からは、アベノミクスによる賃上げ効果を「偽装」したとの批判も出ている。問題は厚労省の責任にとどまらない。政府は国民の理解が得られるよう丁寧な説明を尽くしてほしい。

 統計不正の根は深い。従業員500人以上の事業所は全て調査すると決められている毎月勤労統計をめぐり、事業所数が多いとの理由から東京都内分は平成16年から3分の1程度の事業所を抽出する方法に勝手に変更していた。

 15年に及ぶこの間には、不正の実態を知らされた局長級幹部も厳しく是正を求めなかったという。無責任にすぎる。不適切調査が続いた一部期間について、再集計はほぼ不可能だという。

 基幹統計の継続性も、これで断たれることになる。

 同省では新たに賃金構造基本統計をめぐっても不適切な調査手法が発覚している。調査員が調査票を配布・回収するという決められた手順を守らず、勝手に郵送で済ませていた疑いだ。

 ≪デジタル対応も急務だ≫

 今回の不正問題を受けて基幹統計を点検したところ、全体の4割にあたる統計で集計漏れやミスなどの不備が見つかった。このため政府は、一般統計も総点検することを決めた。当然であろう。

 統計調査を重視してこなかった政府の姿勢が影響している。そう批判されても仕方あるまい。

 再発防止には、不正に関する徹底した再調査と処分が不可欠である。その一方で、政府統計のあり方についても全面的な改革が必要である。特にビッグデータ時代を迎えるにあたり、デジタル化をにらんだ調査手法の改革は喫緊の課題である。

 紙の調査票を送付するなど、旧態依然の手法に頼るばかりでは、調査対象となる企業側の負担が大きいだけではなく、統計データを活用する際の支障ともなる。

 各省庁が独自に実施している統計の整理・統合も積極的に進めるべきだ。総務省の統計委員会で政府統計のあり方を検討する。政府内で重複する統計を洗い出し、役割を終えた統計は廃止するなどの取り組みが欠かせない。

 各省庁に所属する統計職員は、昨年4月時点で約1900人とこの10年間で半減した。行政改革の一環として削減されたものだが、欧米に比べて要員不足が指摘されており、特に専門性の高い職員が足りないとされる。

 政府全体で統計担当官を育成するなどの対策も重要である。必要な統計を精査したうえで、適正な統計組織の態勢、人員を見直すべきだ。効率化を図るために、統計の種別によっては民間委託の可能性も探ってほしい。

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