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【日曜に書く】キョウイクとキョウヨウ 論説委員・鹿間孝一

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 いただいた年賀状に、こう書かれていた。

 日めくり暦中の名言三箇条、

 一、朝のすごしかたが一日を決める

 一、何事も見方次第でおもしろく

 一、見事な出足 鮮やかな引足

 今年こそ厳守実行(の予定)

 ◆高齢者への金言

 原典の日めくりカレンダーに当たると、「見事な出足 鮮やかな引足」は「サッと行ない、サッと終れば、効率が上がり、気持ちも軽やかだ。けじめのある行動が、明日への活力を呼ぶ」とある。

 これはいい言葉だと、さっそく手帳にメモした。残り少ない人生というわけではないが、一日一日を大切に生きたい。

 「定年が 手招きしつつ 遠ざかる」

 「人生の 余暇はいつくる 再雇用」

 先日、第一生命保険「第32回サラリーマン川柳コンクール」の入選100作品が発表されたが、「人生100年時代」を反映して、定年延長や再雇用を詠んだ句が目についた。

 高齢化社会を映すこんな名言もある。

 「老後はキョウイクとキョウヨウ」

 野末陳平さんの言葉だそうで、高田文夫著「ご笑納下さい 私だけが知っている金言・笑言・名言録」(新潮文庫)に出ていた。

 放送作家からスタートし、経済評論家で元参院議員というマルチタレント。黒メガネでテレビに出ていたのが懐かしい。87歳のチンペイ先生の名言は「教育と教養」ではなく、「今日行くところ」と「今日の用事」の意味である。

 なるほどと膝を打った。「行くところ」も「用事」もなければ、高齢者は家に引きこもったままで一日が終わってしまう。

 定年になっても幸いに、まだ会社に行ってすべき仕事があるが、本当にリタイアしたらどうしよう。そろそろ「キョウイクとキョウヨウ」を考えておかなければ、と身につまされた。

 対して、若者には「教育と教養」が必要である。

 ◆成人・還暦の合同式

 今年も恒例のように一部の成人式が荒れた。

 作家の山口瞳さんは毎年、「成人の日」に掲載されたサントリーの新聞広告にエッセーを書いた。

 「二十歳の諸君! 今日から酒が飲めるようになったと思ったら大間違いだ。諸君は、今日から酒を飲むことについて勉強する資格を得ただけなのだ。仮免許なのだ」(人生仮免許)「此の世で好ましいもののひとつが『礼儀正しい青年』だ。反対に、猪口才(ちょこざい)な奴、青二才、嘴(くちばし)の黄色い奴、甘ったれは大嫌いだ。『若者だから、このくらいは許されていい』なんて思っていたら大間違いだ」(青年よ、思いきって行け)

 こんなふうにビシッと言ってやりたい。

 「成年」が18歳に引き下げられることだし、成人式などもう必要なかろう。一方で「第二の人生」のスタートとして還暦式が増えている。

 どうせやるなら、20歳と60歳で合同の式はどうか。どちらも人生の節目である。親子ほども年齢が離れているが、酒を酌み交わしながら「大人とは何か」を語り合う。いいではないか。

 ◆下り坂を楽しむ

 還暦を過ぎても、「まだまだこれから」「もう一花咲かせたい」と思う。

 作家の嵐山光三郎さんは、55歳の時に芭蕉の「奥の細道」を自転車で走破して、「下り坂の極意」を体感した。「下り坂繁盛記」(新講社)から引く。

 「登り坂は苦しいだけで、周囲が見えず、余裕が生まれない。どうにか坂を登りきると、つぎは下り坂になる。風が顔にあたり、樹々や草や土の香りがふんわりと飛んできて気持がいい。(略)しばらく走ると小さな坂に出る。坂を下ったスピードを殺さず、一気に登っていく。登りつつ『つぎは下り坂だ』とはげましている自分に気づいた。下り坂を楽しむために登るのである」

 人生も似たようなものだ。ぜいぜいと息を切らしてペダルをこいできた。風景も目に入らず、疲れて自転車を降り、押して歩くこともあった。下り坂は懸命に生きてきた者へのごほうびである。

 とはいえ、多少の蓄えはいる。だからカルロス・ゴーンさんは、あんなにお金を欲しがったのだろうか。いや、老後が不安だったとは思えないが。(しかま こういち)

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