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【文芸時評】2月号 早稲田大学教授・石原千秋 現代のマウンティング競争

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 村田沙耶香「信仰」(文学界)は、買い物をするときにはすぐに「原価」を気にしてしまう「現実」主義者の永岡が語り手。浄水器カルトで失敗したかつての同級生・斉川が石毛と組んで「リベンジ」するために、今度は「天動説セラピー」を始めるのに引き込まれていく様子を書いた。小説の構成からは、永岡こそが現実というカルトにはまっているだけではないかという皮肉が浮かび上がるが、それはありふれたテーマにすぎない。僕が興味を持ったのは、前半に頻出する「馬鹿」という言葉である。「石毛は馬鹿だから勧誘されても別に自分は引っかからないだろう」とか、「今からその馬鹿を騙(だま)そうとしてるんじゃん」などなど。これを後半まで持ち込めば、マルチ商法的カルトがマウンティング(自分の優位性を誇示する)競争として見えてくる。

 青木淳悟「憧れの世界」(同)は、タイトルとは裏腹に、多摩ニュータウンへの挽歌である。もうジブリ「耳をすませば」の郊外の時代は終わったと。それは近代が終わったということだ。

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