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【日曜に書く】今年の一字、命を繋ぐ「祈」 論説委員・中本哲也

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 胎児の異常が確定した783人の約93%にあたる729人が妊娠の継続を断念し、人工中絶を選択した。

 当事者の重い決断に、第三者は口を挟むべきではない。しかし、科学技術の利用が当事者の自由意思に委ねられるのは、その技術が倫理や法律に照らして健全であることが前提でなければならないはずだ。

 特定の障害の有無を胎児の段階で判定する出生前診断は、その技術自体が命を選別する意図をはらんでいる。現行の母体保護法は、胎児の異常を理由とする中絶を認めていない。

 多くの国民が受診を望んでいるとしても、出生前診断は倫理的にも法的にも、健全性に重大な問題がある。

 日産婦が取り組むべきは利用機会の拡大ではなく、歯止めをかけることである。

 ◆大腸菌に学ぶ

 10年前、大阪大教授だった四方哲也氏に「大腸菌の進化実験」について取材した。国立遺伝学研究所名誉教授の太田朋子さんの「分子進化のほぼ中立説」とともに、生物の進化と共生に関する筆者の考えのよりどころである。

 研究費をめぐる不正で四方氏は平成28年に阪大を懲戒解雇となった。その後、中国・上海市の大学の研究所長に就任したらしい。ネット情報だが消息が分かったので、踏ん切りをつけて書こう。懲戒処分の理由と進化実験は無関係だ。

 四方氏は、大腸菌の生存にとって不可欠なグルタミンの合成能力に差があるグループを同居させ生き残り競争をさせた。

 チャールズ・ダーウィンが進化論の柱として提唱した「自然選択説」で生物の進化をすべて説明できるのであれば、能力の高い大腸菌だけが生き残るはずである。

 結果は違った。条件を変えて何度実験を繰り返しても、個としての能力は低いのに生き残るグループが存在したのだ。

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