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【一筆多論】昔取った杵柄でデイサービス 佐藤好美

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 「就労デイサービス」という耳慣れぬ言葉を聞いたのは10年も前だ。

 オリジナルは、介護保険のデイサービス。要介護の高齢者が日中、ゲームや折り紙などをして過ごす場だ。引きこもりを防ぎ、活動を促すのが狙い。だが、男性や若年認知症の人には人気がない。「そぐわない」のだ。そう。ゲームも折り紙も合わなかろう。

 何とかできないかと、「就労デイサービス」と銘打ってモデル的に事業を始めたのは、東京都日野市の介護事業所だった。軽度認知症やアルコール依存症、引きこもりの人などに、現役時代の仕事や特技、趣味の腕を発揮してもらおうとした。「仕事の場」なら、参加意欲がわくのでは、と考えたのだ。

 ドンぴしゃだった。

 元調理師で認知症の男性には、刃物研ぎを頼んだ。男性は安い包丁には見向きもしないが、桐の箱から高級包丁が出てくると、目を輝かせて研いだ。

 和菓子職人だった男性に菓子作りを頼むと、現役時代の白衣と和帽子を持参し、7~8年ぶりにどら焼きやようかんを作った。作業には以前より時間がかかるし、和菓子は同じ大きさ、形にならない。だが、それが何だろう?

 近隣の事業所や公共機関の協力を得て、公園の清掃や幼稚園のお砂場整備もさせてもらった。

 そうこうするうちに、時間の感覚のなかった人が「仕事は午前9時から」と言い始めたり、アルコール依存症の人が「明日は仕事だから早く寝よう」と言ったりして、実際に酒量が減る効果もあったという。

 認知症や障害で介助が必要になっても、「仕事」で何かを生み出したり、地域に貢献したりが喜びであるのは変わらない。生きがいとかやりがいは生活の張りになる。

 厚生労働省は昨年、ある通知を出した。若年性認知症の人などが、介護サービス利用中に企業などで“働き”、その対価として幾ばくかの謝礼を受けることは可能だとの内容だ。

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