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【新聞に喝!】一国の狭い利益に固執しない日本を 神戸大教授・簑原俊洋

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大阪・ミナミの鯨料理店「徳家」で提供される鯨料理=2018年12月26日午後
大阪・ミナミの鯨料理店「徳家」で提供される鯨料理=2018年12月26日午後

 今年最初の「新聞に喝!」になる。平成が幕を閉じる本年、産経の報道が今まで以上に充実したものとなるのを願う。他方、年末に一愛読者として違和感を抱かせる記事がいくつかあった。筆者の見解に賛同しない読者もいるのは承知の上で取り上げたい。

 まず「大丈夫?」と思ったのが産経政治部記者が選ぶ「政治家オブ・ザ・イヤー2018」(12月12日付)である。きっと遊び心をもった企画なのだろうが、アンケート結果は安倍晋三首相の圧勝。基本的に親安倍路線を貫く新聞なのでこれ自体に驚きはないが、意外に思ったのは、首相も「一政治家」としてカウントされていることにあった。2、3位に選ばれていた河野太郎外相、菅義偉官房長官も閣僚である。もう少し真剣に同記事がいう「最も輝いていた政治家」を選定するなら、政権内の人は除外した方がもっと面白くかつ有意義な試みになったのではなかろうか。諸外国では大統領や首相、閣僚の位置づけは一般的な「政治家」と区別されるのが常である。

 次いで残念だったのは、日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退方針を固めたことに関する「産経抄」(同22日付)である。「反捕鯨国は頭を冷やし、邪魔をしないでもらいたい」というが、もしかして食文化は不変だと思っておられるのだろうか。問題は知能の高さではなく、食資源としての持続可能性にある。くわえて、日本の鯨食文化の保持が何よりも重要なら、日本が近代化の道を邁進(まいしん)したこと自体を否定的に捉える必要があろう。海洋資源保護の重要性を中国などに訴え続けていくのであれば、偏狭なナショナリズムに基づく食文化保護の意識を排し、国際機関からの脱退が日本にとって本当に得策かどうか冷静に考えるべきだ。

 日露外交に森喜朗元首相とプーチン大統領の交友が果たした役割を描いた11月の記事にも気になる記述があった。ロシアのクリミア併合に対する欧米の経済制裁に同調した2014年、森氏がプーチン氏に日本の制裁は実害を与えない体裁上のものでしかないと伝えていたことが紹介されていた。捕鯨もそうだが、これは詰まるところ日本は西洋社会と価値観を共有しない原理原則なき島国であることを露呈するものである。日本はなぜ一国のみの狭い利益に固執し、先陣として次の時代を確実に切り開くという気概を持てないのだろうか。

 日本は紛れもなく大国であり、刻々変化する世界の潮流を正確に読み、適切に対応してこそ強力なモラル・リーダーシップと存在感を発揮できる。新年早々の「喝」は産経がそうした日本を応援して「最も輝ける新聞」になれるよう、期待を込めての愛のむちだと思ってもらいたい。

                   

【プロフィル】簑原俊洋(みのはら・としひろ) 昭和46年、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大デイビス校卒。神戸大大学院博士課程修了。政治学博士。専門は日米関係、政治外交史。

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