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【主張】新防衛大綱 いずも空母化を評価する 抑止力向上へ必要な予算を

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 日本は、中国や北朝鮮がもたらす厳しい安全保障環境に直面している。政府が、新しい視点に立ち国家と国民を守る防衛体制を築こうとしている点を評価したい。

 新たな防衛力整備・運用の指針「防衛計画の大綱」と、装備調達を示す次期中期防衛力整備計画(中期防)が18日、閣議決定された。中期防は平成31年度から5年間の防衛費の総額を過去最大の27兆4700億円程度とした。

 宇宙やサイバー空間、電磁波という新しい領域を「死活的に重要」とし、陸海空での対処を加えた「領域横断(クロス・ドメイン)作戦」を遂行する「多次元統合防衛力」を構築していく。

 ≪かけ声倒れは許されぬ≫

 相手国のサイバー空間利用を妨げるサイバー攻撃力や、電磁波を用いて相手の通信網やレーダーを無力化する能力を整備する。宇宙でも相手の通信などを妨げる能力を持つ。

 海空の軍拡著しい中国をにらみ、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型を改修して短距離離陸・垂直着陸のステルス戦闘機F35Bを運用できる事実上の航空母艦(空母)とする。

 大綱完成時に、ステルス戦闘機F35を147機体制とする。うちF35Bが42機、通常の飛行場を使うF35Aが105機となる。

 F35の追加調達分だけで費用は1兆円超となる。トランプ政権が求める米国製武器の輸入にも対応するものだが、F35は現時点で入手し得る最新鋭の戦闘機であり、防衛力増強に必要だ。

 大綱は「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化する」としたが、威勢のいい作文に終わらせてはならない。予算の効率的使用に努めるのは当然だが、必要な防衛費を充ててもらいたい。

 装備品の開発、生産、維持整備に欠かせない日本の防衛産業の基盤を維持することも重要だ。

 いずも型の空母改修が専守防衛に触れるとの反対論は誤りだ。国民を守る上で有益か、費用を負担できるかという有用性の論理に立って判断すべきで、その観点から改修は妥当である。

 反対論は、政府が保有できないとしてきた「攻撃型空母」の概念を理由に持ち出すが、いずも型の改修には当てはまらない。何十年も昔の冷戦期に生まれた議論であり、百害あって一利なしだ。

 中国外務省は大綱に「強烈な不満と反対」を表明したが、受け入れがたい。日本に防衛力増強を強いているのは中国の方である。

 中国の脅威への対処を見据えなければならない。中国は空母を何隻も揃(そろ)えようとしている。海空軍は太平洋へも進出しているが日本の飛行場は少ない。改修したいずも型の出番である。緊急時に、米軍のF35Bが利用することも可能で、同盟の運用力が高まる。

 ≪日米「戦略目標」整えよ≫

 有事には、敵の弾道ミサイルなどが空自基地へ断続的に撃ち込まれ使用不能になる恐れがある。短距離離陸できるF35Bなら、南西諸島方面の島々でも運用できる。生存性の高い貴重な航空戦力として抑止力を強められる。

 自衛隊の現有能力を十分発揮させることは最優先課題だ。弾薬・燃料の備蓄、戦闘時の医療体制強化を重視した点は極めて妥当だ。真に戦える体制を整えれば、かえって平和を維持できる。

 大綱には問題もある。公明党の要求で、改修したいずも型にF35Bの常時配備はせず、空母とも呼ばないことになった。当面は運用の習熟をはかる期間で常時配備は不要だろうが、なぜ与党が自衛隊の運用上の柔軟性を損なうのか。空母の機能をもつ艦船を護衛艦と呼び続けるのもおかしい。

 大綱は、北朝鮮を「重大かつ差し迫った脅威」としたが、より根本的な脅威である中国は「安全保障上の強い懸念」としただけだ。防衛力充実の必要性を示すため、臆せず真実を記してほしい。

 「専守防衛」にとらわれ、「敵基地攻撃能力」の保持に踏み切らなかったのは極めて残念だ。前大綱と同様、引き続き検討することが盛り込まれたが不十分である。空自の長射程ミサイルなど敵基地攻撃能力に転用できる装備は導入するが、正式方針にしなければうまく対応できまい。

 大綱は日米同盟の強化をうたうが、米国が「対中冷戦」に乗り出した点を反映していない。日米の戦略目標の調整と「国家安保戦略」の見直しが必要である。

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