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【主張】官民ファンド 朝令暮改が招いた混乱だ

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 代表的な官民ファンドである産業革新投資機構(JIC)の高額報酬をめぐり、所管官庁の経済産業省と対立していた田中正明社長ら民間出身の全役員が辞任を決めた。JICは、発足からわずか3カ月で機能停止に陥った。

 両者が対立した背景には、官民ファンドの役割をめぐる基本認識の根本的な違いがある。JICは投資効率を高めて収益の最大化を目指したが、経産省は投資対象の選定や役員報酬の決定などで一定の国の関与を求めた。

 官民ファンドの原資は、国の資金である。投資対象の選び方や資金回収などで説明責任が求められるのは当然だ。国による経営監視も欠かせない。

 官民ファンドは民間が手掛けないリスクマネーを提供して新たな産業を育成する役割がある。そこでは資金回収や収益拡大が絶対的な条件とは限らない。

 そうした公的な役割を明確にせず、JICの設立を急いだ経産省の責任は大きい。今回の混乱を契機に、官民ファンドは原点に立ち返り、その役割を厳しく再認識しなければならない。

 辞任を決めた田中社長は「経産省が事前に示した条件を後になって反故(ほご)にした。信頼関係が築けない」と同省を批判した。他の社外役員も、当初提示した役員報酬案や運営方針をJIC発足後に変えた同省の姿勢を問題視した。

 世耕弘成経産相は高額報酬をめぐり、「国の資金で運営する組織として、国民に納得してもらえる相場観がある」と釈明した。だが、世耕氏は国会で「一流の人材を確保するには、それなりの報酬が必要だ」とも述べていた。高額報酬に対する批判を恐れた朝令暮改が招いた混乱といえよう。

 JICは活動休止に追い込まれる。混乱を収拾するためには、JICの投資目的を明確にして出直す必要がある。前身の産業革新機構を改組して今年9月に発足したJICには法律上、「産業競争力の強化」が求められている。民間資金の呼び水となるような資金提供に特化するなど、有望なベンチャー企業に対する支援に機能を限定するのが望ましい。

 公的資金を無駄にしてはならないが、収益ばかりを追求しても困る。官民の役割分担を整理し、各省庁が相次いで設立した官民ファンドの統合も進めるべきだ。

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