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【宮家邦彦のWorld Watch】ブッシュ父元大統領を悼む

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 実のところ、今週のコラムではブエノスアイレスでの米中首脳会談を取り上げるつもりでいた。案の定、結果は単なる先送りに終わった。米政府発表によれば、額はいまだ不明なるも、今後90日間に中国が米国から多額の農産物、エネルギー、工業産品を購入する一方、強制的技術移転、知財窃取、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス、農産品につき、中国が構造改革を行うことで合意したという。米国は予定されていた25%への関税引き上げを凍結するが、上記合意が実行されない場合には引き上げを実施するというから穏やかではない。内外メディアは「貿易戦争は一時休戦」と報じたが、その実態は中国が実施不可能な多くの条件を課した事実上の最後通告ではないか。

 日米貿易摩擦の真っ最中、筆者は外務省でFSX(次期支援戦闘機)日米共同開発計画の担当官だった。当時のブッシュ41政権は手ごわかったが、これほど荒っぽいことはしなかった。トランプ政権の外交交渉には良質で国民に奉仕しようとする姿勢が根本的に欠けている。「米国と世界は共通の死活的利益を守り、法の支配を支援し、侵略に対抗しなければならず、われわれは決して脅しには屈しない」。イラクのクウェート侵攻から1カ月後、ブッシュ41はこう述べたが、今の大統領にはこうした姿勢がみじんもない。古き良きアメリカ政治は終わったのか。それとも、いつか再びあの憎たらしくも本質的に良質で正直な政治が戻ってくるのか。今は神に祈るしかなさそうである。

                   

【プロフィル】宮家邦彦

 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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