PR

ニュース コラム

【葛城奈海の直球&曲球】北朝鮮は眼前の遠い国 家族の言葉「鳥になれたら…」

Messenger
新たに開発した「先端戦術兵器」の試験を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)。朝鮮中央通信が16日配信した(朝鮮中央通信=共同)
新たに開発した「先端戦術兵器」の試験を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)。朝鮮中央通信が16日配信した(朝鮮中央通信=共同)

 「鳥になれたらいいのに」…ある家族の言葉が耳から離れない。17日から3日間、北朝鮮による拉致の可能性が排除できない特定失踪者の家族会と特定失踪者問題調査会による韓国研修に同行した。

 臨津江(イムジンガン)対岸に北朝鮮を望む統一展望台で望遠鏡をのぞくと、田んぼの向こうに金日成の史跡館、小学校、住宅群などが見えた。徒歩や自転車で移動する人影も。「人がいっぱいこっちに向かってくる!」。家族の声が弾み、反射的に、みな笑顔で手を振っているのは、肉親の姿と重ね合わせているのだろうか。

 その場で、北朝鮮向け短波放送しおかぜの収録を行った。それぞれが、これまでになく肉親に近づけたと深い感慨をお持ちのようであった。両岸の距離は狭いところで460メートル。川はその気になれば渡れそうなほど浅いが、行き来はかなわない。その上をV字の編隊を組んだ鳥の群れが飛んでいった。冒頭の言葉を発したのは、それを目にした家族、中村クニさんだ。

 18日夜には、山口県に上陸経験があり、昭和58年に釜山で拘束された元工作員、李相哲(仮名)氏らと懇談した。

 固定スパイの回収役だった彼は、日本の警察について、「2時間ごとにしか巡回してこないし、来るときにはランプを点滅させて『気付いてください』と言っているようなもの」と全く脅威ではなかったことを明らかにした。

 釜山では、半潜水艇で6人中2人が上陸。生け捕りの指令が出ていたため、韓国の特殊部隊は丸腰だったが、5人がかりで飛び掛かられ、拳銃を使う暇もなかった。自殺予防のため、すぐ口にプラスチックのさるぐつわをはめられたおかげで「今も自分は命がある」という。現場から離脱した4人は、死亡した。

 日本はどうすべきか尋ねたら「自衛隊を大幅に拡充すべきだ。でないと長い海岸線を守れない」との答えが返ってきた。近くて遠い北朝鮮を目の当たりにして「胸をかきむしられるようだった」という家族の痛みは、本来、日本と日本国民の痛みだ。うずく傷から何を学ぶか。重い問いを突きつけられているのは、他ならぬ私たちである。

                   

【プロフィル】葛城奈海(かつらぎ・なみ) やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、キャスター、俳優。昭和45年東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会広報部会長、林政審議会委員。著書(共著)に『国防女子が行く』(ビジネス社)。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ