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【新聞に喝!】貴乃花親方騒動、相撲道からの見方 京都大学霊長類研究所教授・正高信男

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日本相撲協会に退職の届け出を提出し、厳しい表情で記者会見をする貴乃花親方=9月25日、東京都港区
日本相撲協会に退職の届け出を提出し、厳しい表情で記者会見をする貴乃花親方=9月25日、東京都港区

 高校や大学の同期で、私同様に国立大学で教員として勤務している友人に会うと、「いよいよやね。どこかあった?」と言うのが、あいさつ代わりになってしまった。

 定年が迫ってきているのだ。そこで私立大学などに再就職先ポストを探すものの、少子化の今日、おいそれとは見つからない。しかも、独立したひとつの研究室を持っていると、自分の身の振り方よりもスタッフの将来への配慮がどうしても優先される。

 この記事を読んで私の行き先に心当たりのある方はご一報願いたいほどだが、そういう立場からすると今回の貴乃花親方の退職は、驚きを通り越してよくあそこまで見事に弟子を放り出せるなと、うらやましさすら感じてしまうほどであった。産経9月27日付の主張は「これを潔しとは、とてもいえまい」と切って捨てていた。一方でその前日の産経の記事は「追い込まれた親方に手を差し伸べなかった」と、日本相撲協会の側の非も指摘していた。

 退職騒動に関するマスコミの反応は、例えていえばこんなふうだろうか。ある町工場のオーナーが、親会社や仕入れ先の締め付けに耐えきれず会社を投げ出すと言い出した。周囲が詰め寄る。「その気持ちは分かるが、路頭に迷う従業員とその家族がかわいくはないのか」と。

 私はもう少し違う視点もほしいと思った。たとえば相撲の伝統やそれが培ってきた精神を踏まえた見方だ。

 相撲界は幕藩体制のようなシステムをとってきた。諸藩にあたる各部屋は時代を経て分派したが、本家筋と分家筋は依然、一門を形成して結束する。貴乃花親方は紆余(うよ)曲折の揚げ句、そこからはじき出されてしまった。

 角界のサラブレッドで現役引退後は部屋付き親方の苦労もほとんどせず、やすやすと一国の藩主になった。

 しかし弟子が受けた傷害事件に端を発した一連の騒動を、天が一代年寄たる自分に与えた七難八苦ととらえることはできなかったのだろうか。かねて当人も言ってきたように「神業としての相撲道」を信奉するのならば、相撲人としてこういう見方もできると思うのだ。

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