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【産経抄】10月18日

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 東欧出身のルースティッヒといえば、シカゴのギャングのボス、アル・カポネからも大金を巻き上げた希代の詐欺師である。パリに滞在中の1925年、エッフェル塔が修理を必要としているとの記事を新聞で読み思いつく。

 ▼自ら「逓信省長官代理」と名乗り、金属スクラップ業者を呼び出して告げた。塔の修理はコストがかかり過ぎるので、取り壊してスクラップとして売ることにした。大乗り気の業者の耳元に、賄賂を持ちかける。まんまと札束をせしめたルースティッヒは、ウィーン行きの列車に飛び乗った(『詐欺とペテンの大百科』青土社)。

 ▼JR五反田駅に近い旅館の跡地は、約2千平方メートルの広さを持つ希少物件である。入札なら100億円にもなる東京都心の一等地を狙ったグループは、土地の所有者や仲介業者になりすました。典型的な「地面師」の手口である。住宅大手の積水ハウスに取引を持ちかけ、約55億円をだまし取った。

 ▼警視庁捜査2課は、偽造有印私文書行使などの容疑で男女8人を逮捕した。偽のパスポートや印鑑証明は、役場で見破れないほど精巧に作られている。とはいえ、本物の土地所有者からは警告が届いていた。なぜ土地売買のプロたちが、詐欺に引っかかったのか。

 ▼不動産関係者によると、東京五輪・パラリンピックを控えて地価が高騰している土地取引は早い者勝ちの状況となっていた。詐欺師は、相手に信じ込ませればよかった。この機会を逃したら損をするぞ、と。

 ▼「浜の真砂(まさご)は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」。石川五右衛門の辞世と伝えられる。米国の獄中で死んだルースティッヒも同じ意見であろう。人間が心の弱みを抱えているかぎり、詐欺とペテンの種も尽きることはない。

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