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【主張】外国人労働者 拙速な拡大は禍根を残す 人数や業種に歯止めかけよ

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 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、政府が新たな在留資格の創設を柱とする関連法案の概要をまとめた。

 これまで認めてこなかった単純労働に道を開く。高度な試験に合格した人には家族の帯同を含めた永住を可能とする。国の形を大きく変え得る政策の大転換だ。

 安倍晋三首相は移民政策を否定しているが、極めて近い仕組みと言わざるを得ない。

 政府は今月召集の臨時国会での法改正を目指している。ただ、外国人の大量受け入れについて世論は二分しており、拙速に進めては禍根を残す。

 どの分野でどれだけ受け入れるのか、安倍首相は中長期的な戦略を国民に示す必要がある。

 ≪参政権まで認めるのか≫

 安倍政権が単純労働者の受け入れ容認に政策の舵(かじ)を切った背景には、少子高齢化に伴う恒常的な人手不足がある。菅義偉官房長官は「即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みをつくることが急務だ」と説明した。

 課題はあまりにも多い。新たに設ける在留資格は、一定の日本語能力と技能を条件に就労を認める「1号」と、さらに難しい日本語能力および熟練した技能を求められる「2号」とに分けられる。

 1号の在留期間は最長5年である。若い労働力を循環させようという発想だが、外国人労働者を必要としている国は日本だけではない。そんなに都合よくいくとはかぎらない。1号について家族の帯同を認めないというのは、人権侵害となる恐れがないのか。

 2号となれば、定期的な審査はあるものの事実上の永住や家族の帯同が認められる。これが移民とどう違うのか。定住者なら職業を自由に選べる現行制度との整合性をどうするつもりなのかも明確ではない。

 1993(平成5)年末には永住者は4万8千人だったが2017(29)年末は15・6倍の74万9千人に達した。さらに増えてくれば地方参政権を求める声も高まるだろう。これを認めれば、人口が激減する地域で永住者の方が多くなる危うさもはらむ。

 こうした将来的に起こりうる課題について、政府の議論はまったく聞こえてこない。

 さらに懸念するのは、政府が各業界からの要請を聞き入れ、対象業種を次々と拡大させようとしている点である。当初は「当面は農業、介護、建設、宿泊、造船の5分野」とし、25年頃までに50万人を超える受け入れを目指すとしていた。それが今や3倍近くの分野が候補に挙がっている。

 日本の勤労世代が1千万人単位で減っていくため、あらゆる職種で人手不足は続くだろう。各業界からの要望が拡大の一途をたどることは間違いあるまい。その多くを認めれば、毎年数十万人を確保しなければならず、日本社会は大きく変質する。

 ≪まず将来ビジョン示せ≫

 大規模な外国人の受け入れにより、短期的には人手不足の解消に効果を発揮したとしても、これと同時に、社会保障や子供の教育など社会負担の増大も招く。

 どこで線引きし、受け入れ人数や業種の拡大に歯止めを掛けるのか。それは、人口減少社会が進む日本の形を決めることでもある。安倍首相には、まず今後100年をにらんだ総合的な国のビジョンを示すよう求めたい。

 外国人労働者への依存度が高まった段階で、当て込んだ人数が来日しなくなることや、多くの人材を送り出している国との外交上の衝突などがあって、一斉に引き揚げてしまう事態も考えておかなければならない。日本人がほとんど就職しない業種があれば、社会機能は麻痺(まひ)しよう。

 受け入れ態勢の強化も急がれる。多くの国で社会の分断や排斥が起こっている現実もある。入管白書によれば、不法滞在で強制退去を命じられながら仮放免される外国人は毎年3千人余りいる。「安価な労働力」と見なし、違法残業や賃金未払いなどの法令違反を犯す例も後を絶たない。

 新制度は法務省の入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げし、日本人と同等以上の報酬水準を確保するよう求めているが、入国後の生活に関わる厚生労働省や地方自治体、警察などの連携強化も不可欠だ。外国人が安定した生活を営めるよう生活環境の整備や支援を充実させる必要がある。

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