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【日曜に書く】論説委員・山上直子 興福寺に天平の風が吹く

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 天平回帰をめざして

 「長らく信仰の動線がなかったのです」という多川貫首の言葉にはっとした。

 歩いてみると分かるが、近鉄奈良駅から商店街を抜けると、いつのまにか興福寺の境内に入っている。南円堂などにお参りし、五重塔や東金堂を眺めつつ行くと、その先には奈良公園。どこからどこまでが寺で公園なのか、判然としないのもこのお寺の特徴だった。

 「秋風や囲ひもなしに興福寺」と詠んだのは正岡子規だ。

 司馬遼太郎も「私どもが、奈良公園とか奈良のまちといっている広大な空間は、あらかた興福寺境内だったといっていい」(「街道をゆく 奈良散歩」)と書いている。都市が寺をのみ込んでいったのだ。

 その境内に、ようやく中金堂が蘇(よみがえ)った。周囲の堂宇を従えて建つその姿は、信仰の対象としての威厳に満ちている。

 「藤原不比等の時代の文化空間を再構築するという情熱に支えられてきました。天平への回帰がいつでも興福寺のテーマです」(多川貫首)

 今、奈良は国内外からの観光客で大にぎわいだ。興福寺に行ったなら、建築や彫刻ではなく堂宇と仏像という信仰の対象としてみてほしい。きっと、境内に吹く天平の風を感じることができるはずだ。

 中金堂一般公開は20日から。(やまがみ なおこ)

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