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【新聞に喝!】新潮45休刊…「ヘイト」レッテルによるリベラルからの言論抑圧を危惧 東大史料編纂所教授・酒井信彦

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月刊誌「新潮45」10月号
月刊誌「新潮45」10月号

 雑誌「新潮45」の休刊が発表された。7月に出た8月号の杉田水脈(みお)論文の内容が問題視されて、批判が寄せられていたが、9月の10月号でそれに反論する特集を組んだために、かえって問題が大きく再燃したのである。

 休刊に至るまでの経緯は、9月18日の発売直後に社内から批判の声が起き、21日に佐藤隆信社長の反省的な見解が表明され、25日に新潮社の名前で休刊を公表するに至った。

 この問題に対する新聞各社の報道は、熱心に報道したものと、控えめに報道したものと、大きく2つに分かれることが注目される。

 前者が朝日、毎日、東京であり、後者は、日経・産経が簡略で、読売がやや詳しい-といえる。それは報道の量と論調に表れているが、さらに社説の内容に読み取ることができる。なお、朝日、毎日、産経には社説があるが、読売、日経、東京には社説は見られない。

 社説は、朝日は27日に「あまりに無責任な対応」、毎日も27日に「安易な『偏向商法』のつけ」と、ともに記事の書きぶりと同様に新潮社を厳しく批判するものであった。

 一方、産経の社説は、28日に「『言論の場』を閉ざすのか」と開かれた議論を求めるものであった。

 新潮45問題での以上の傾向は、メディアにおける、いわゆる「リベラル」(私はエセ・リベラルだと思うが)と、非リベラル・保守との相違を反映したものである。今回は保守側の論文が批判されたために、リベラル側が大いに高揚したわけである。

 具体的な問題箇所が曖昧なまま、休刊が断行されたのだから、さらなる究明は必要であるが、この際、新潮45に限定することなく、より広く新聞・放送を含めたメディア全体の現状について、本質的な検証が必要なのではないか。

 リベラル側の報道においても、真実を隠蔽(いんぺい)する、いわゆる「報道しない自由」の問題など極めて重大な問題が存在するのだから。

 その意味で私が最近気になるのは、リベラル側が意見の異なる相手に、簡単に「ヘイト」のレッテルを貼って断罪することである。

 ヘイトと認定する基準は曖昧であるのに、今回の記事には、さらに、「ヘイト(差別)的な記事」(毎日社説)とか、「ヘイトに近い断言」(朝日26日、ロバート・キャンベル発言)-といった表現が出現している。ヘイトの基準がさらに緩められて、リベラルからの言論抑圧が強化されないか、強く危惧するものである。

 リベラル派が大好きなはずの「私はあなたの言うことには賛成しないが、私はあなたがそれを言う権利を、死んでもまもるだろう」-というフランスの哲学者、ヴォルテールの言葉はすっかり忘れられているようだ。

                   

【プロフィル】酒井信彦(さかい・のぶひこ) 昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂(へんさん)所で『大日本史料』の編纂に従事。

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