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【産経抄】10月4日

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 「光の魔術師」とも呼ばれる17世紀の画家、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)に「手紙を書く婦人と召使い」という作品がある。実は2度も盗難に遭っている。最初は1974年4月、アイルランドの個人宅から強奪された。

 ▼ロンドンで無差別テロを繰り返していた、武装組織IRAの犯行である。メンバーが別の事件で逮捕され、絵も発見された。12年後、今度は闇マーケットで売りさばくのが目的の犯行だった。幸い泥棒は警察のおとり捜査に引っかかり、名画は再び無事に戻った。過去には、世界の美術界を震撼(しんかん)させた贋作(がんさく)事件も起こっている。

 ▼犯罪者が目を付けるのは、その希少性である。フェルメールの現存作品は、わずか三十数点にすぎない。そのうち国内の展示では最多となる9点が集結する「フェルメール展」が、明日から東京・上野の森美術館で開かれる。「手紙を書く婦人と召使い」や美術の教科書にも載っている「牛乳を注ぐ女」も含まれている。

 ▼世界的に知名度の高い画家だが、日本では特に空前のブームが続いている。書店の棚には、フェルメールの解説本がずらりと並ぶ。何年もかけて作品を所蔵する美術館を訪ね歩く、「巡礼」の旅に出る人も後を絶たない。

 ▼フェルメールは死後長く忘れられていた。19世紀後半にフランスの画商が発表した論文がきっかけとなって、人気が高まっていく。「フェルメールが5千ポンドで売れた」。アガサ・クリスティは1953年に出した『葬儀を終えて』の中で、英国の新聞に掲載されたこんな記事を紹介している。

 ▼名探偵ポアロによれば当時の5千ポンドは、「店を借りて喫茶店が開ける」ほどの価値である。今ならその100倍以上の値がついてもおかしくない。

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