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【産経抄】10月3日

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 英国の細菌学者、フレミングは後片付けが苦手だったらしい。1928年、夏休みの旅行から研究室に戻ってみると、ブドウ球菌の培養に使ったシャーレに青カビが生えていた。普通ならすぐ洗ってしまうところだ。

 ▼フレミングは、青カビの周りだけ細菌の生育が止まっているのを見逃さなかった。カビがつくる物質を突き止めて、ペニシリンと名付けた。「奇跡の薬」と呼ばれる抗生物質は、偶然から生まれた。フレミングは45年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。

 ▼「偶然は、準備のできていない人は助けない」。フランスの細菌学者、パスツールの名言である。今年のノーベル医学・生理学賞に決まった京都大の本庶佑特別教授(76)もフレミングと同じように、準備ができていた。

 ▼27年前、本庶さんの研究室で偶然見つかったタンパク質の遺伝子は、PD-1と名付けられた。本来の研究目的とは関係のない物質だったが、本庶さんは「面白い」と直感した。実験を重ねて、異物を攻撃して体を守る免疫にブレーキをかける役割が見つかった。

 ▼ブレーキをはずせば、免疫ががんを攻撃してくれる。がんの専門家でないからこそ、医学の常識にとらわれない本庶さんの発想から、がん免疫治療薬「オプジーボ」は生まれた。がん治療を一変させる「奇跡の薬」になり得ると、世界中の注目を集めている。

 ▼本庶さんは、中学から高校卒業まで、ハワイから帰国した日系人に英語を習っていた。大学入学前、得意の英語を生かして外交官を志望するか、あるいは弁護士か医師かと進路に迷った。野口英世のように病気の原因を発見すれば、多くの人を助けられると、京大医学部に入学する。医学の道を選んでくれて本当によかった。

 2018.10.3

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