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【主張】貴乃花親方退職 他の選択肢はなかったか

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 これを潔しとは、とてもいえまい。現役当時の粘り腰もなく、自らあっさりと土俵を割った印象だ。平成の大横綱で一代年寄の貴乃花親方が、角界を去る。唐突で残念な散り際である。

 一番の被害者は突然、親方と部屋を失う弟子らだろう。秋場所では小結の貴景勝が9勝、幕内復帰の貴ノ岩が10勝を挙げた。

 貴の字を継承する弟子たちは奮闘していた。彼らの涙の慰留を振り切り、自らの意地と面子(めんつ)のためにほうり出すのか。「断腸の思いだった」と口にするなら、他の選択肢もあったろう。

 弟子たちは今後、千賀ノ浦部屋に引き取られる。親方は「これからも弟子たちを柔らかな気持ちで見守ってあげたい」と話したが、あまりに無責任ではないか。

 親方は今年3月、昨年秋に元横綱日馬富士が貴ノ岩にけがを負わせた傷害事件で内閣府に告発状を提出し、その後に取り下げた。

 協会側から告発状の内容を「事実無根」と認めるよう圧力があったことを退職の理由に挙げ、「真実を曲げることはできません」と説明した。

 だが、協会側は圧力を否定している。親方もその中身については「有形無形の要請」と述べ、具体的な言及はない。これでは親方の独り相撲としか映らない。

 傷害事件に端を発して協会との対立を深め、協会の調査要請を拒否し続けて混乱を大きくしたのは親方自身である。告発状の取り下げは部屋の弟子の暴行問題を受けたもので、その際、「貴乃花一門」の名称も返上し、「一兵卒としてやっていく」と出直しを誓ったのではなかったか。

 この間、置き去りにされたのは相撲ファンである。土俵外の争いの連続に、うんざりした好角家も多かったはずだ。

 横綱時代の貴乃花は、実力とともに、絶大な人気を誇った。親方となっても、夏場所から務める勝負審判では、入場のたびに大きな声援と拍手が起きていた。

 本来であれば、親方の存在は角界にとって、何ものにも替え難い財産だったはずである。本格復活に苦戦を続ける横綱稀勢の里の、よきアドバイザーとしての役割にも期待はあった。

 協会に、親方を引き留める術(すべ)は本当になかったのか。どちらも頑(かたく)なに過ぎた。双方が歩み寄れる妙手が、必ずあったはずだ。

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