PR

ニュース コラム

【産経抄】9月18日

Messenger

 40年以上も別居していたロックミュージシャンの夫、内田裕也さんと、なぜ別れないのか。女優の樹木希林さんは、これまで何度も聞かれた。樹木さんは若い頃から、仏典に親しんできた。

 ▼不登校の情報紙、「不登校新聞」のインタビューで、いきなりお釈迦(しゃか)様の話を始めている。ダイバダッタという、師に背き命まで狙う弟子がいた。困り果てたお釈迦様は、ある日気づく。「ダイバダッタは、自分が悟りを得るために難を与えてくれる存在なんだ」。

 ▼樹木さんにとって内田さんは、そんな「有難(ありがた)い」存在だった。左目の失明や全身に転移したがんもまた、自分を成熟に導いてくれる難ととらえた。樹木さん自身も、かつてはダイバダッタだった。文学座時代は、大先輩の名優、杉村春子さんに盾突いた。盟友だったテレビプロデューサーと出演女優の不倫を暴露して、大騒動に発展したこともある。

 ▼75年の人生は波瀾(はらん)万丈だった。晩年の映画での名演技は、国際的にも高い評価を受けた。小欄の記憶には、ドラマ「寺内貫太郎一家」の「きん」おばあさんや、富士写真フイルムのCMが強烈に残っている。

 ▼部屋に張った沢田研二さんのポスターの前で、「ジュリィーッ」と身もだえする。CMでは、「そうでない方はそれなりに写ります」の名コピーがあった。いずれも台本にはなく、樹木さんのアイデアだったと知って驚いた。

 ▼冒頭のインタビューは、『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)に収録されている。もう一つ、樹木さんが子供たちに残した、とっておきの言葉を紹介したい。「お釈迦さんがね『人間として生まれることはきわめて稀(まれ)なことだ』と言ってるの。だったらね、生き続けなきゃ、もったいないじゃない」

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ