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【主張】リーマン危機10年 世界秩序の揺らぎ克服を

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 世界的金融危機の発端となった米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻から15日で10年となる。

 国境を越えて拡散したショックは世界同時不況をもたらした。主要国の金融緩和策と財政支出の総動員で世界経済は底割れを踏みとどまった。

 すでに世界は危機を脱したようにも見える。だが、未曽有の事態は国際社会に地殻変動を起こし、新たな危機を誘発しつつあるのではないか。

 危機対応で世界にあふれた金は株価や不動産などを高騰させ、バブル再燃の傾向を強めた。ポピュリズム(大衆迎合主義)と孤立主義の台頭は、次なる危機に備える足かせとなりかねない。

 銀行や富裕層のみ税金で救済されたという大衆の憤りはエリート層に向かい、家や仕事を失った労働者は移民をスケープゴートにする政治家の言説に熱狂した。

 リーマン危機は、英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ米大統領誕生、欧州の極右政党躍進に通じる起点である。オバマ政権時代の米国が「世界の警察官」という地位を放棄したのもリーマン後の経済力低下と無縁ではない。

 対照的なのが強国の地歩を固めてきた中国だ。4兆元(当時レートで57兆円)の景気刺激策を打ち出すと、世界最速でV字回復して世界第2の大国に躍り出た。

 習近平政権は勢いに乗り、巨大経済圏構想「一帯一路」を推し進めた。相手国を借金漬けにする手法は、「新植民地主義」の具現化と批判されている。

 だが、強国路線の結果、中国経済は債務の山を抱え込んだ。中国の覇権主義的傾向を自らへの挑戦と受け止めたトランプ政権は貿易戦争を仕掛けた。これらが次のショックの導火線とならないか。

 リーマン後、先進国の緩和マネーで潤った新興国経済にも危うさがある。米国の利上げで資本の逆流や通貨安に悩まされ、経済危機が懸念される国も多いからだ。

 この10年の教訓は「危機は予測できない」(ガイトナー元米財務長官)ことだ。だからこそ各国の政治指導者は、いったん危機が起きれば連携して火消しにあたる備えを怠ってはならない。

 懸念するのは、先進7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)など多国間協調の枠組みが、分裂や対立の舞台と化していることだ。米国はじめ主要国には国際秩序の再構築を急ぐ責務がある。

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