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【宮家邦彦のWorld Watch】米匿名高官寄稿の衝撃

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【宮家邦彦のWorld Watch】
米匿名高官寄稿の衝撃

移動の飛行機内で記者の質問に答える米トランプ大統領。内憂外患は続く=7日(AP) 移動の飛行機内で記者の質問に答える米トランプ大統領。内憂外患は続く=7日(AP)

 米メディアの一部には今回の匿名高官をウォーターゲート事件の際の「ディープ・スロート」と比較する向きもある。確かに匿名高官という意味では似ているが、当時のニクソン大統領とトランプ氏では資質があまりにも違い過ぎる。むしろ共通しているのは彼らが生きた時代かもしれない。1970年代は歴史の転換期、中東やアジアでは戦争が終わり対話が始まった。米国の国力は低下したと考えられ、米国民が自信を失い始めた時期だ。同様に、現在は新たな歴史の転換期かもしれない。イラン、中国など旧帝国が再び台頭し始めた。米国民は再び自信を失いつつある。

 しかし、話はこれで終わらない。米国人にとっては「大統領と民主主義」の問題だろう。だが、米国の同盟国から見れば、今後もトランプ政権が続く場合、結果として同盟関係がどの程度害されるかが最大関心事だからである。

 既に弊害は出始めている。中東では米国大使館のエルサレム移転とイラン核合意からの撤退で曲がりなりにも安定していた地域情勢に再び暗雲が立ち込めている。欧州では民族的大衆迎合主義が復活しつつあり、東アジアでは米国の北朝鮮に対する稚拙な対応で北朝鮮の核保有が不可逆的に進んでいる。

 71年のニクソンショックでは台湾が犠牲となり、日米同盟も一時的に弱体化したが、全世界の国々は今後も起こる可能性のあるトランプショックにどう対応すべきか悩んでいるはずだ。大統領より合衆国の国益を優先する匿名高官の存在は心強いが、彼らの影響力には限界がある。11月の中間選挙まで2カ月を切った。世界各地の米国の同盟国は今息をのんで、選挙結果の行方を見守っている。

                   

【プロフィル】宮家邦彦(みやけ・くにひこ) 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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