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【黒沢潤のスポーツ茶論】すがすがしき金農ナインに東北人の「意地」を見た

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【黒沢潤のスポーツ茶論】
すがすがしき金農ナインに東北人の「意地」を見た

 金足農がローソンと共同開発した「金農パンケーキ」=8月23日、秋田市  金足農がローソンと共同開発した「金農パンケーキ」=8月23日、秋田市

 「『金農パンケーキ』を東京で売る予定はありますか?」。甲子園を沸かせた金足農(秋田)が決勝で敗れた後、東京・荻窪のローソンで年配の男性店員に聞くと、「残念ながらその計画はありません」との言葉が返ってきた。

 この商品は、金足農とローソンが「あきたこまち」の米粉を混ぜるなどして共同開発した地元の人気限定商品だ。店員はこちらの意に沿えないことを丁重にわびつつも、どこかうれしそうな表情を見せた。隠れた「金農ファン」であることを瞬時に察知した。

 金足農は全国が酷暑にさらされたこの夏、並み居る私立強豪校を激闘の末に倒すなど、“平成の一揆”と呼ぶにふさわしい奮闘を見せた。ダルビッシュ有(宮城・東北高出身)や、菊池雄星(岩手・花巻東高出身)でさえも成し遂げられなかった優勝旗の“白河の関越え”が彼らの誓いでもあった。

 東北地方の冬は長く、実に厳しい。寒風吹きすさぶ中、ときに負担のかかる長靴を履いて雪上でランニングに取り組むなど、雪国の逆境を力に変える東北人の「意地」を甲子園の地でまざまざと見た気がした。

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 今から四十数年前。東北地方で米作を営む祖父の自宅を訪れ、夕食を共にした。古武士のように背筋を凜(りん)と伸ばし、ご飯を静かに口に運ぶ祖父は、夕食を済ませた筆者の椀(わん)に米粒が1つ残っていたことを叱責した。

 「この一粒を集めるために、農家の人々がどれほどの苦労をし、汗を流したのか、お前には分からないのか」

 米粒たった一つの重み-。人生50年が過ぎた今、食事のたびに思い出されてならない光景の一つである。

 肌をも突き刺す夏の日差し、うなりを上げて北上する夏の巨大台風など、自然の猛威に農家はなすすべもないのが実情だ。「日照りのときは涙を流し、寒さの夏はオロオロ歩き…」。作家で農学者の宮沢賢治が吐露したように、厳しい自然によって農作物を全滅させられる農家の人々の心の“痛み”は計り知れない。丹精込めて作った生命が、短期間で死へと追いやられることの諦念をDNAに深く刻み込んでいるとはいえ、である。

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