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【国語逍遥】(101)清湖口敏 ギオンは擬音? 地域限定で生きる「祗園」

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 荷風が教えるように●が墨田川を表し、墨田川の一部流域だけで使われる地域限定の漢字だとするなら、これはけだし「方言文字」と呼ぶべきで、『日本語百科大事典』(大修館書店)も「方言文字は主に地名に見られる地方独特の漢字の字体」と説明している。

 『国字の字典』(東京堂出版)をひもとけば、圷(あくつ)、垳(がけ)、▲(はけ)、▼(さこ)、墹(まま)、垈(ぬた)、汢(ぬた)、◆(なぎ)、逧(さこ)、閖(ゆれる)…と、地域性の強い文字が国字の中にごろごろ存在していることがあらためて理解される。これらの中からいま圷、▲、閖の3字について同字典の解説を要約し、示したい(地名は現在のものと一致しない場合もある)。

 【圷(あくつ)】茨城県久慈郡金砂郷村圷。由緒は定かではないが、当地方で通常、河川に近い低地を圷(あくつ)という。

 【▲(はけ)】埼玉県狭山市旧堀兼村字▲下(はけした)。東京の周囲から東北にかけて丘陵山地の片岸を「はけ」という。「関東ロームの層が赤いので、この字を当てはめたものと思われる」(埼玉県立浦和図書館)

 【閖(ゆれる)】宮城県名取市閖上(ゆりあげ)。昔、仙台の藩主が大年寺に参拝し、山門内から望んだ浜の名を近侍の者に尋ねた。「『ゆりあげはま』でございます」と申し上げると「文字はどう書く」。「文字はありません」と答えると藩主は「門のうちから水が見えるゆえ、今後は門の中に水と書いて閖上(ゆりあげ)と呼ぶようにせよ」。こうして仙台藩専用の閖ができたという(名取市史から)。

 国字にまつわる由緒の一々が、私の興味をそそってくれる。

 ところでここまでは国字の中の「方言文字」を見てきたが、中国由来の漢字でありながら、わが国では特定の地域だけで使われているといった例もある。

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