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【オリンピズム 道 東京へ】水面舞う“蝶”池江璃花子(4)武者修行で宿った確かな“魂”

アジア大会女子50メートル自由形で金メダルを獲得し、6冠を達成した池江璃花子=ジャカルタ(納冨康撮影)
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 目の前には美しい海が広がり、太陽の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ。昨季、記録がピタリと止まり、初めてスランプに陥った池江璃花子(ルネサンス)は今年1月、海と山に囲まれた豪州最大のリゾート都市、ゴールドコーストにいた。

 2008年北京五輪女子個人メドレー2冠のステファニー・ライス(豪州)らを育てた名コーチ、マイケル・ボール氏のもとへ、約3週間の“武者修行”に訪れたのだった。スプリント力の向上やトレーニングの視野を広げるため、自ら望んだものだ。

 ボール氏のチームには、池江が昨夏の世界選手権女子100メートルバタフライで惨敗した際、銀メダルに輝いたエマ・マキオン(豪州)が在籍。韓国やカナダからもトップクラスの選手が集まっていた。

 世界レベルの練習環境に身を置き、世界に勝つためのヒントを探る。国内敵なしの身長170センチの体いっぱいに新しい刺激を落とし込むため、日本から所属先のコーチは同行しなかった。

 英語の練習メニューは初めての経験。ボール氏の説明を聞きながら、五感をフルに働かせ、ウオームアップの段階からマキオンと競った。時にレース本番の水着に着替え、神経を集中させてスタート台から飛び込む大舞台さながらの練習も行った。

 超一流相手に行った「他流試合」の中で驚いたのが、覇気に満ちた選手たちの表情だった。チーム内の多くが社会人。年に1度の国際大会代表選考会で勝ち残るための必死さが、池江の胸にひしひしと伝わってきた。ここで、負けず嫌いの血が騒ぐ。「もともと楽しいと思っていた水泳を、さらに楽しいと思わせてくれた。すごくいい機会だった」

 そんなエースの心の変化を日本水泳連盟の上野広治強化本部長は見逃さなかった。

 5月上旬の日本代表合宿。現スポーツ庁長官で、ソウル五輪男子100メートル背泳ぎ金メダリストの鈴木大地氏を育てた鈴木陽二コーチの下で、心身を追い込む厳しい鍛錬を課せられていた日のことだ。

 これまでは弱音を吐き、途中で諦めるようなことも多々あった。だが、代表合宿先で目撃されたのは、悔し涙を流しながらもレベルの高い記録を刻み、懸命に食らいつこうとする姿だった。「練習で手を抜くことがなくなったことが大きな成長。目を見ていると生き生きしているし、われわれのアドバイスも『受け入れよう、栄養にしていこう』というように感じた」と上野氏。表面上は完璧に見えながらもどこか物足りなさを残す作品に、確かな“魂”が宿ったのだった。

 今年は4年に1度の五輪の中間年にあたる。アジア大会があったとはいえ世界選手権もなく、例年、選手たちがモチベーションを維持しにくい年でもある。そうした中で、「いろんなことにチャレンジできる年」と位置づけ、前進しようとする池江は、さらにもう一つ、驚くべき決断を下していた。(西沢綾里)

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