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【主張】EU離脱交渉 「無秩序」回避へ知恵絞れ

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【主張】
EU離脱交渉 「無秩序」回避へ知恵絞れ

 来年3月末に予定される、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた交渉が重大な局面に入った。

 英EU双方は10月までに、離脱条件を定めた協定と、将来の双方の関係を示す政治宣言について合意を目指している。ところが主張の隔たりはいまだに大きく、打開の糸口は一向に見えない。

 折り合いがつかぬまま協定なき無秩序な離脱に陥れば、企業活動や金融市場が混乱する深刻な事態を招く。欧州に進出する日本企業にも多大な悪影響を及ぼそう。

 これを回避する責任は、英国とEUの双方にある。その点を厳しく認識し、知恵を絞って現実的な妥協点を見いだしてほしい。

 特にメイ英首相は指導力を発揮すべきだ。強硬離脱派の閣僚辞任という犠牲を払いながらも対EU方針をまとめたが、交渉が不調を来せば、EUとの経済関係を極力維持したい穏健派の支持も失いかねない。国内の軋轢(あつれき)を抑えつつ交渉を進展させられるかである。

 先に再開した首席交渉官会合では、交渉が最終段階入りしたという認識と、協議を加速すべきだという点で一致したが、そこまでである。EU側は10月合意が後ずれする可能性を示唆した。懸案解決が見通せないからである。

 その一つは、メイ政権が打ち出した「モノの自由貿易圏」構想の是非である。モノの取引はEUと共通ルールとし、英国経由の製品は関税徴収を英国が代行する。円滑な物流の維持が狙いである。

 だが、EUの単一市場は「人・モノ・資本・サービス」の自由移動が不可分だ。モノだけを持ち出し、統合された関税領域のような状態を目指す英国の発想はEUにとって身勝手と映るのだろう。

 英領北アイルランドとEU加盟国アイルランド間の国境管理問題も決着を見ないままである。

 10月合意が遅れれば、双方の批准手続きが間に合わず、無秩序離脱が現実味を増す恐れがある。その場合、英側では企業撤退が加速し、乳製品や医薬品が供給不足に陥る。EUの経済成長も減速するとみられる最悪のシナリオだ。

 日本にとって英国とEUはともに戦略的に重要な存在だ。EUとは経済連携協定(EPA)に署名し、英国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に関心を示す。双方と関係を緊密化する上でも、混乱は障害となる。交渉の進展を強く促すべきである。

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