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【日曜に書く】世界を苛む「スターリン」の影 論説委員・斎藤勉

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【日曜に書く】
世界を苛む「スターリン」の影 論説委員・斎藤勉

映画「スターリンの葬送狂騒曲」のワンシーン 映画「スターリンの葬送狂騒曲」のワンシーン

 筆者がモスクワ特派員だったソ連末期のゴルバチョフ時代。記事が当局の逆鱗(げきりん)に触れたのか、車のタイヤを4つ一度にパンクさせられたり、奇妙な嫌がらせはあった。しかし、内外の記者が殺された話は当時、聞いたことがないのに、プーチン政権下では記者や政治家などの暗殺が相次いでいる。

政敵は地の果てまで

 スターリンは「自分の存在を脅かす政敵は地の果てまでも追い込んで消す」執念深さだった。レーニンの後継争いで最大のライバルだったトロツキーを1929年に国外追放したあと、40年8月、亡命先のメキシコ市にまで刺客を送り、ピッケルで撲殺した。

 同様の暗殺は世界各地で起きている。主な事件だけでもリトビネンコ元ロシア情報機関要員毒殺(2006年英国)、スクリパリ元ロシア軍大佐親娘の毒殺未遂(今年3月同)、金委員長の腹違いの兄、金正男氏毒殺(昨年2月マレーシア)…。

 プーチン政権による2008年のグルジア(現ジョージア)侵攻、14年のクリミア半島奪取、中国の南シナ海の軍事基地化などは、スターリンが73年前の夏に犯した北方領土強奪に淵源(えんげん)がある。いずれも火事場泥棒的な、力ずくの現状変更だ。同時に、60万人もの日本人のシベリア抑留はその実、壮大な拉致事件でもあった。家畜のごとく貨車で「収容所列島」に強制連行された。それは金王朝による世界各地での一連の拉致事件と同一線上にある。これらすべてが国家犯罪だ。

 スターリン死して65年。世界は今なお、その影に苛(さいな)まれているように見える。(さいとう つとむ)

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