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【産経抄】8月5日

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 米国で人気のショー番組が、日本でも放送された。昭和30年代のことである。舞台の上では、やんちゃな男の子が自慢の喉を披露していた。音程などおかまいなし。度胸満点の熱唱に、司会者が言った。「坊や、元気なのはいいけれど、歌うときだけは、五線譜の中で歌おうね」。

 ▼調子外れの歌声を、さわやかな笑いに変える。司会者の機転に番組を見ながら拍手したと、今は亡きフリーアナウンサーの小川宏さんが自著に書いていた。五線譜からはみ出した音符ほど、聴衆の耳を迷惑させるものもない。かといって、言下にけなせば角が立つ。

 ▼ここ半年の世界経済を見るに、72歳が五線譜無用とがなり立てる「自国第一主義」の歌声は、坊やのステージとあまり大差ない。米国のトランプ大統領が中国に発動した高関税は、報復関税の返歌を招き、今や終止符の打ちどころがない“貿易戦争狂騒曲”である。

 ▼7月から始まった対中制裁は発動を検討中の分も含めて総額2500億ドル(約28兆円)の中国製品が対象になる。中国も1100億ドル分の関税で応じるという。怒声に怒声で応える不毛な輪唱は、自国企業や消費者の心理を冷やすだけだろう。いつまで続けるのか。

 ▼米国のやり方も乱暴だが、横紙破りの商慣行で自国に富を偏らせた中国に不協和音の音源はある。価値観をともにする日本や欧州と声をそろえて非を鳴らせなかったのか。事ここに至っては、聴き手にどう響くかおかまいなしの、中国憎しの「怨歌(えんか)」にも聞こえる。

 ▼米国は輸入車への追加関税も検討しており、業績好調のトヨタ自動車なども無事には済むまい。不協和音は聞くに堪えないが、耳に栓をしてやり過ごすわけにもいかない。日本はどこで、合いの手を入れたものか。

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