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【正論】宗教対立の時代こそ「共存」を 東京大学名誉教授・平川祐弘 

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 宗教観は国で違う。大統領選挙はフランスではカトリックと無宗教の人が競うが、ドイツでは新教と旧教が注目される。米国では「無宗教」は「不信心」と同じである。

 それだけに日本人の半数が「無宗教」と答えるから米国人は驚く。それでいながら「無宗教」の人も寺では手をあわせる。正月には300万人が明治神宮に参拝する。クリスマスにバチカンに集まるカトリックよりも多い。本人に自覚はないが日本人は信心深いらしい。神にも仏にも祈る。

 ≪和を基本に置いた聖徳太子

 身内がキリスト教の洗礼を受けるというから、「これから先、神棚にも手をたたいてお詣(まい)りをするかね」と聞いたら、「お詣りする」と答えた。

 「それがいい」と言う私はお経を読まないが、それでも寺に寄ると賽銭(さいせん)をあげて合掌する。神前では威儀を正し、かしわ手を打つ。以前は寺にも神社にも祈る自分は何教か、とこそばゆく感じた。

 とくに「日本は人口1億2000万人だが、神道は9100万人、仏教徒は8700万人で合計は1億7800万人。総人口より多い」と西洋人に皮肉られると、返答に窮し、「お宮さんは地域住民をみな氏子に、お寺さんは葬式の際に坊様を呼ぶ人は信徒に数えるから」などと自己卑下的に釈明した。

 だが近頃は「同じ一人が神仏をともに拝んで悪いことはない。複数宗教の共存はいい」と思うようになった。

 この平和共存は聖徳太子が十七条憲法第一条で「和ヲ以テ貴シトナス」と諭した七世紀に始まる。大陸文化導入を機に力を伸ばす蘇我氏と、それに敵対する物部氏との抗争を目撃した太子は、仏道を尊びつつも、一党の専制支配を懸念(けねん)し、支配原理でなく「以和為貴」という共存原理を国家基本法の第一条とした。

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