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【正論】浮かび上がる米軍撤退論の悪夢 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

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【正論】
浮かび上がる米軍撤退論の悪夢 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏 杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏

 すべての点で対照的な2人の指導者が演じたプレーには思わず息をのむ場面がいくつかあったが、それにしても金正恩朝鮮労働党委員長はわずか数カ月間に中国、韓国、米国の最高指導者とそれぞれ対等の立場で会談する主役にのし上がってしまった。

 ≪トランプ政権に生じ始めた変化

 米朝首脳会談についての最大の心配事は「トランプ大統領は安全に関する保証を与えると北朝鮮に約束」したことだ。「最大限の圧力」を中心とした対北政策は極めて短日のうちに化けてしまった。これが、北東アジア全体に黒雲のように広がらないかどうか。

 「金委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を再確認した」との共同声明のくだりも気になる。マスメディアは「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)が声明から落ちたと批判しているが、これは近々、北朝鮮との交渉に入るポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の手腕に委ねるしかない。

 ポンペオ長官は首脳会談直前の6月11日にシンガポールでの記者会見で「北朝鮮との交渉でわれわれが求めている最終目標はCVIDだ」と明言した。ボルトン補佐官は北朝鮮が強硬派として敬遠する人物の一人だ。

 外交には駆け引きがある。表面に出せないやり取りも暗黙の約束ごともあろう。が、対北政策に関するかぎり整然としていたトランプ政権に変化が生じ始めた。

 6月に入ってから、ホワイトハウスが突然、北朝鮮に対する新たな制裁措置は取りやめると発表し、大統領自身が北朝鮮に対する「最大限の圧力」という表現は使いたくないと言い始めた。

 金英哲党副委員長をホワイトハウスに招いた際の対応は同盟国の最高指導者に対する以上の丁重さだった。首脳会談を直前に控えた配慮に違いないが、会談を欲していたのはむしろ北朝鮮側だったのではなかったか。米上院外交委員会でも共和、民主両党議員がこれを問題にしていた。

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