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【正論】医者が多いと病気も増えるのか 学習院大学教授・伊藤元重

伊藤元重・学習院大学教授(野村成次撮影)
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 学生時代に授業で聞いた因果関係の事例の話をよく覚えている。中世のロシアだったと思うが、それぞれの村の病人の数と医者の数を比べた人がいる。そうしたら、医者の数の多い村の方が病人の数も多いことが分かった。そこで、医者が増えると病気も増えるという見方が広がったようだ。

 ≪1人当たりの医療費は西高東低

 この話の信憑(しんぴょう)性は定かではないが、医療が確立しておらず、呪術(じゅじゅつ)などにも頼った時代であるので、そうした考え方が広がったのは不思議なことではない。もちろん、この話のポイントは、因果関係を読み間違えているということだ。医者が多いから病気が増えるのではなく、病気が多い村には医者への需要が多く、結果的に医者の数も多くなるというのだ。

 最近、医療のデータを見る機会が増えたら、「医者が増えたら病気が増える」というのが、間違った因果関係と必ずしも言えないと感じるようになっている。専門家が医療の西高東低と呼ぶ現象だ。

 一般に西日本の方が東日本に比べ1人当たりの医療費が多くなる傾向にある。よく話題になるのは高知県だが熊本県や福岡県なども結構高い。調べてみると1人当たりの平均在院日数が長かったり、投薬薬剤の費用が多くなったりしている。これらの地域に共通しているのは病床数が多いことだ。医者の数ではないが、医療サービスの供給が多ければ、結果的に医療需要も多くなるということだ。

 ただ、より長く入院させたり、より多くの薬剤を投入することで患者が健康になっているわけでもない。1人当たりの医療費が低くなっている東日本の住民の方が不健康だということはないのだ。想像できることは、入院用の病床を抱えていればそれを埋めようとして過剰診療になる。医療機関としても売り上げを上げないと成り立たないのだ。供給が需要を生み出すということが起きている。

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