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【国語逍遥(97)】映る・写る 「動かぬ証拠」はどっち? 清湖口敏

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【国語逍遥(97)】
映る・写る 「動かぬ証拠」はどっち? 清湖口敏

防犯カメラ。事件捜査に役立つほか、犯罪抑止への効果も期待される 防犯カメラ。事件捜査に役立つほか、犯罪抑止への効果も期待される

 だが、「かく」に漢字を当てようと思えば、「(爪で)掻く」「(字を)書く」「(絵を)描く」などと、細分された概念ごとに異なる漢字を用いなければならない。

 こんな複雑な使い分けには昔の人も苦労したのに違いなく、江戸中期の儒学者、荻生徂徠は『訳文筌蹄(やくぶんせんてい)』という著書で同訓の各漢字の意味を詳述し、作詩作文や漢詩和訳、読書の際の参考に供した。収録漢字数は2434にも及ぶ。

 「合」を見ると-。「合ハ離・析・判ノ反対ナリ。ハナレワカレタルモノ、一ツニナルナリ。又ワリフヲアワセタルゴトキ、男女交合ノゴトキ…」(『荻生徂徠全集』から字体を改めて引用)と展開していく字解は実に面白い。それにしても右のような解説など、いまどきの辞書にはとても載せられまいと思うと、つい頬が緩んでしまう。

 現代人にはむしろ、文化審議会国語分科会が平成26年に出した報告『「異字同訓」の漢字の使い分け例』が参考になろうか。その前書きでは、漢字の使い分けを明確に示すのは難しく、年代や個人、各分野で表記習慣に違いがあると断ったうえで、報告と異なる使い分けを否定する趣旨ではなく、仮名の使用も妨げないと言及している。

 使い分けの曖昧さがあらためて思われるが、そうはいっても「日本車に合えた」のように明らかに違和感のある用字も実際にある。いま私が最も気になるのは「防犯カメラに映る」という表記である。

 先の報告では「写す・写る」に「画像として残す」の意を、「映す・映る」に「画像を再生する」の意を与え、次のような注釈を加えている。〈「ビデオに写る」は、被写体として撮影され、画像として残ることであるが、その画像を再生して映写する場合は「ビデオを映す」と「映」を当てる〉〈防犯ビデオや胃カメラなど、撮影と同時に画像を再生する場合も、再生する方に視点を置いて「ビデオに映る」と書くこともできる〉

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