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【国語逍遥(97)】映る・写る 「動かぬ証拠」はどっち? 清湖口敏

防犯カメラ。事件捜査に役立つほか、犯罪抑止への効果も期待される
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 4月23日付の特派員コラムに「日本の中古車に合えた」とあり、読者から「会えた」あるいは「逢(あ)えた」と書くのが正しいのではないかとの指摘が複数寄せられた。本欄へも、「アう」の漢字表記をテーマに取り上げてほしいといったメールを頂戴したので、今回は同じ訓に別の漢字を当てる同訓異字(異字同訓とも)について考えてみたい。

 まず右の「合えた」だが、手元の辞書にあたっても「合う」に「出あう」や「対面する」の意味を載せるものは一つもなかった。新聞協会の用語集でも「合う」は「合致、調和、互いに同じ動作をする」意とし、「会う」は「主に人と人とが会う」意としており、弊紙をはじめ大抵の新聞がこれに準拠している。

 これらを踏まえると「中古車に合えた」は、やはり奇異な書き方と言うほかなく、漢字を使うのなら、逢は常用漢字表の表外字なので「会えた」ということになるだろう。ただこれとても違和感が多少残るため、できれば「出合えた」「巡り合えた」に言い換えたいところではあった。「あえた」と仮名で書くのも極めて賢明な方法だ。

 同訓異字で厄介なのは、辞書によって使い分けの判断が異なるケースである。例えば「マルい月」は「丸い」か「円い」か。辞書の記述もまちまちで、当然、一方が正しくて他方が誤りという話にはならない。

 「ハカる」と訓じる漢字に至っては、常用漢字だけでも図・計・測・量・諮・謀があり、表外字や表外訓まで広げると、昨今は語感がすっかり汚れてしまった「忖度(そんたく)」の忖も度も「ハカる」の訓をもつ。それぞれの漢字にはそれぞれの意味があり、これらを完璧に使い分けるのは日本人には至難の業である。もともとの日本語(和語)と中国由来の漢字とでは、概念に大きな違いがあるからだ。

 「筆墨以前の表記法は、掻(か)ききずをつけてしるすことであった」と白川静著『字訓』が示すように、和語の「かく」には「掻く」「書く」「描く」といった多くの概念が含まれる。

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