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【産経抄】5月14日

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 ある日突然、人が姿を消す。昔の日本人はこの一大事を「神隠し」と呼び、天狗(てんぐ)の仕業だと考えた。民俗学者の柳田国男が昭和24年、江戸時代に天狗にさらわれた作之丞という名の農夫の話を書いている。

 ▼現在の秋田県北部の山で作之丞が薪を切っていると、天狗が突然現れこんなことを聞かれた。「お前は過去が見たいか、未来が見たいか」。未来と答えると、たちまち気を失った。目覚めて山を下りると、80年の年月がたっていた(『作之丞と未来』)。

 ▼平成の天狗はさらった子供に、未来の世界を見せてくれたりしない。無残にも奪い去るだけである。新潟市西区の斎場で先週末、小学2年の大桃珠生(たまき)さん(7)の告別式がしめやかに営まれた。珠生さんは今月7日夕、下校途中に友達と別れ、1人になったところを何者かに連れ去られ殺害された。

 ▼珠生さんは、事件当日の朝の登校中にも男に追いかけられていた。「黒い服を着て、サングラスをかけたおじさんだった」と友人に告げている。現場周辺では、事件前から不審者の情報が相次いでいた。珠生さんは、両親と兄の4人家族。仲良しのお兄ちゃんと道路でサッカーを楽しむ姿が、よく見られたという。

 ▼週末あるテレビ番組が、プロのテニス選手をめざす子供たちの合宿生活を紹介していた。かつて錦織圭選手も参加した合宿では連日、主宰する松岡修造さんの厳しい指導が続く。挫折しそうになった少年に、修造さんは両親から預かった手紙を読ませた。

 ▼「お父さんとお母さんは、あなたを何とか夢に続く列車に乗せることができた」「私たちもいっしょに乗っていることを忘れないで」。珠生さんが乗るはずだった列車は、どんな夢に向かおうとしていたのだろう。

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